助産師が出産前からサポートします NPO「きびる」 妊娠や育児の正しい情報を発信

安永陽祐 (2021年7月17日付 東京新聞朝刊)

NPO法人「きびる」を立ち上げた野口和恵さん=高崎市で

 子育ての負担を軽減し、虐待やネグレクトなどを防ごうと、看護師で助産師の野口和恵さん(43)=群馬県富岡市=らが、母親支援に取り組むNPO法人「きびる」を高崎市内に立ち上げた。代表を務める野口さんは「妊娠、出産、育児に関する正しい情報の提供やサポートが不足している。失われる命をなくしたい」と意気込む。

訪問看護で直面 育児のたくさんの問題

 野口さんは看護学校卒業後、群馬県内の大学病院などで看護師、助産師として勤務。2016年に高崎市内に訪問看護ステーションを設立した。乳幼児の訪問看護に力を入れる中で、若年出産や貧困、虐待、家庭内暴力など育児を取り巻くさまざまな問題に直面した。「地域に妊娠から育児までを相談できる助産師がいない。産まれる前にもできることがあるのでは」と今年、同法人を結成した。

 メンバーは、女性活躍を推進する企業の経営者や弁護士、会計士、作業療法士など10人。福岡県出身の野口さんは、人と人や思いを結び付けるという願いを込めて、地元の言葉で「結ぶ」を意味する「きびる」を団体名にした。

医師に相談するほどでは…というときに

 助産師として正しい情報を発信しようと、動画投稿アプリ「TikTok」で、妊娠や出産に関する動画を投稿している。産院選びのポイントや妊娠初期の症状、妊娠中に食べて良い物などをテーマに野口さんが解説し、30万回以上再生された動画もある。

 妊婦らからはさまざまな質問も寄せられている。野口さんは「『医師に相談するほどではないけど、行政の相談窓口はどんな人が対応するのかよく分からない。でも素人じゃ不安』という人にとって、助産師の私は相談しやすいのでは」と手応えを感じている。

 今後は、情報発信のほか、LINEを活用した24時間の相談や両親、企業への研修、講演なども計画している。小学生と中学生の2児の母親でもある野口さんは「誰でも育児に悩むし、苦労する。寄り添える存在になれれば」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年7月17日