〈国際女性デー 2022〉子育てと仕事の両立は”よくばり”? 性別役割をめぐる無意識の偏見「アンコンシャスバイアス」とは
アンコンシャスバイアスとは
経験や価値観に基づく無意識の思い込みや偏見。内閣府調査(2021年)では、76.3%の人が性別役割などで、何らかのアンコンシャスバイアスをもっているという結果になった。男女とも上位は「女性には女性らしい感性があるものだ」「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」といった性別役割意識だった。
パパを”気遣う”ハンドブックが炎上
「夜泣きがうるさくても我慢してるし、多少は手伝っているんだから、勘弁してほしいな…」と父親である男性が、人ごとのように妻に向けてつぶやく。イラストがツイッターに次々とアップされ、「なんでパパが気遣いされる側の『周囲の人』に入ってるの?」などと批判が湧き起こったのは、昨年11月のことだ。
イラストが掲載されたのは、広島県が作った冊子「働く女性応援よくばりハンドブック」。タイトルに対しても「子育てして働くのがよくばりってこと?」と非難が相次いだ。子育てしながら働く際の支援制度や働く人を守る法律などをわかりやすく伝えるのが目的の冊子だったが、批判を受け、県は内容や表現を見直すことを決めた。
発行元は女性が多い職場だったのに
「『よくばり』は県のビジョンから、前向きな言葉として使っていた」。発行元の広島県働き方改革推進・働く女性応援課長の兼田みゆきさん(50)はそう釈明する。課員は17人のうち、過半数の11人が女性だ。歴代の部長、課長も女性が多く、子育て中の職員もいた。だが、今回、主に当事者の女性たちから批判を受けた表現などについて「議論になることはなかった」という。
A5判50ページの冊子の初版は2014年に完成。主に制度改正を反映させるため3回改訂したが、全体の構成や表現を見直したことはない。「男性は仕事、女性は家事育児」という性別役割分担意識を変えようという機運が高まる中、無意識の偏見を伝えてしまわないか、といったチェックは働かなかった。
そして県が昨年11月、冊子をツイッターで紹介したのをきっかけに「炎上」した。兼田さんは「今回、いろいろな受け止めがあると気付かされた。多様な視点や幅広い意見を取り入れることが大事」と教訓を得たという。
誰もが持つ偏見 自覚するのが大切
SNSを中心に、ジェンダー平等に向けた発信をしている臨床心理士みたらし加奈さん(28)は「アンコンシャスバイアスの解消を担うべき行政が、逆に強めてしまった」と指摘。作り手に女性が多かったことに、「当事者だからといって偏見がないわけではない。むしろ強固になることもある」と解説する。
「偏見は、誰もが持っている『オプション』みたいなもの。それ自体は悪いものではないが、他者を傷つけることもある。大切なのは、思い込みがある自分に自覚的になり、他者への発信や働きかけに向き合っていく作業だ」と話す。
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