〈坂本美雨さんの子育て日記〉32・センチメンタル母ちゃん 3歳が終わっちゃう…

(2019年7月26日付 東京新聞朝刊)

パレードでミニーを見上げる娘(左)と幼なじみのいまちゃん

行きつけの優しいお花屋さんで

 娘との行きつけのお花屋さんがある。とても優しい店主にいつも甘えさせてもらい、お花を包んだりリボンを切ったりと、カウンターの向こう側に入り込んで教えてもらっている。一緒に選ぶのも楽しい。かわいらしい花々が色鮮やかに並ぶなか、必ず個性的な、存在感の強い花を選ぶ。茎が太くて南国っぽいものや、花というよりは「植物」と呼ぶほうがぴったりくるようなもの。ひらひらしたかわいらしいものを選ぶのは照れくさい、そんな自意識もあるのかもしれない。なんとなく、そんな気持ちは自分の幼い頃にもうっすら覚えがある。


〈前回はこちら〉31・手作りの旗を持って出発!園のワクワク「街歩き」


 先日、一緒に選んで飾っていた花がそろそろ寿命を迎え、選別してさようならしていたら「お花かわいそうだよ!」と言ってきた。「元気が無くなって飾れなくなったのだけ、ありがとうしてバイバイしてるんだよ」と伝えた。朝のバタバタな時間だったので、いまいち納得しきれていなかったような気がするけれど、そのままにしてしまった。

自分の中にある、母の姿

 園に送り出して一人になってから、もうちょっと丁寧に説明をして一緒に選別すべきだったなと思う。お花が元気な時と枯れた状態の基準とか、一見枯れていてもその姿がキレイで飾っていたかったりとか、その判断にもいろんな要素があり、娘には娘できっと違う基準がある。小さなことだけど、これから暮らしていくのにきっと大事なこと。

 わたし自身は、教わったというほどではないが、花の手入れをする母の姿を見ていた気がする。花瓶に生ける時のバランス、毎日お水を取り換えること、茎を切るときはハサミを斜めに入れること。日常の中でなにげなくいつのまにかやっていたことを意識し直すとき、母や、当時のベビーシッターさん、子守をしてくれていた親のスタッフさん達(たち)の影響が自分に埋め込まれていることを感じて、うれしくなる。

2人でわんわん泣いた夜

 さて、この記事が出るころ、娘が四歳の誕生日を迎える。昨晩娘を寝付かせながら、3歳終わっちゃうねぇとなにげなく口に出したら急に涙があふれてきて、眠りの入り口にいた娘もそれにびっくりして泣きだしてしまった。2人でわけもなくわんわん泣くというシュールな状況に、なんで泣いてるんだっけ?とだんだん笑えてきて、照れながら眠りについた。2歳の終わりにもこんな夜があったような気がする。相変わらずセンチメンタルな母ちゃんである。でもこの感じはずっと覚えていたいと思う。(ミュージシャン)