〈奥山佳恵さんの子育て日記〉5・同じ質問を繰り返した祖父に長男の反応は…

(2019年9月20日付 東京新聞朝刊)

主人の運転する車で、義父の暮らす茨城へ。この日は敬老の日でした

家族みんなでおじいちゃんに会いに…

 3連休の最終日となった16日、家族みんなで義父に会いに行きました。今年に入ってからもう何度目かな。自宅の神奈川から義父の住む茨城まで片道約200キロ。毎回、主人の運転する車で向かいます。なかなかの距離ですが、それでも「できるだけ時間をつくって義父に会いに行こう」と、主人と決めている理由は、80歳代の義父の体調が近頃、優れないから。会いに行くたびにあちこちが痛いと嘆き、日を追うごとに弱っていくように見えます。お別れの時期が近づいているのかもしれない。帰り道の車はいつもそんな話になってしょんぼり。生まれてきたからには、この世を去る順番があるとはいえ、悲しいものです。


〈前回はこちら〉4・障がいを忘れ、初めて怒ってしまった日


 前回、お義父(とう)さんのところに行った時は、高校2年の長男がちょうど試験前のタイミングで、彼だけ参加できませんでした。悪い想像だけれど、もし前回が最後の機会だったら、お互いに悔いが残る。そう懸念しての、このたびの茨城。なので、前回と日にちはほとんど空いていない。しかし、いざ、家族全員そろって会いに行ったらお義父さんはすこぶる元気! 痛みもなくなって、すたすた歩いてる。え、なんなの、不死身なの? 安心するやら、拍子抜けするやら。こんなことあるんだ、とにかくよかった!

「老い」と「成長」が交差した瞬間

 すっかり元気なお義父さん。頭も体もしっかりしている。お昼に食べに行った回転ずしだって何皿も平らげてる(私と同じ数のお皿。笑)。部活動でお琴を弾いている長男に「どうしてお琴にしたの?」と、興味深く質問している。不思議だよね、聞きたくなるよね! それに丁寧に答える長男。楽しい時間は瞬く間で、食後はお義父さんの家に移動しておしゃべり。

 この日は、お義父さんの体調復活劇だけではありませんでした。お義父さんはふと長男に問うたのです。「どうして部活をお琴にしたの?」。ドキーン! お義父さん、それつい数時間前に質問したばかり! まったく同じ質問を受けた長男はさて、どうするだろう?

 すると、彼は同じ回答をしたのでした。「じいちゃん、それ2回目だよ」なんてことはおくびにも出さず。そっくりそのまま、同じように答えてくれたのです。時間をかけ、ゆっくりと老いていく義父と、時間をかけ、ゆっくりと成長している長男。老いと成長。相反するものが交差した瞬間を目の当たりにしたような思いでした。お義父さん、バトンは次世代にいつでも渡せる状況になったかもしれないけど、まだまだ元気でいてね!(女優・タレント)

   
〈次回はこちら〉6・かけっこはゴールまで全力。以上!

コメント

  • 読み終わった後何とも言えないすがすがしい気持ちになりました。奥山さんはとても素敵な子育てをされてますね!お兄ちゃんの福祉への道が実現しますように‼️ うちにもダウン症の娘がおり、こちらの奥山さんの記