〈田中健さんの子育て日記〉32・「2分の1成人」が描く夢

(2018年3月16日付 東京新聞朝刊 )
子育て世代がつながる

田中健さんの子育て日記

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娘のドリームツリーの一部

 先日、娘の小学校主催の「2分の1成人式」に出席してきました。

 僕は1961年、家内は78年に10歳でした。当時はそうした催しはなく、初めての経験に期待も膨らみます。一方、当の娘は式を前に、家でコソコソと書き物をする時間が増えていました。

 平日の5、6時間目にもかかわらず、多くの保護者が来校しています。教室内には、一人一人の「ドリームツリー」が飾られていました。将来なりたい職業、そのために現在していること、必要な学び、5年後の未来予想などが書かれ、クラスメートからの応援文も添えられていました。

鍼灸(しんきゅう)師になりたい

 そしていよいよ全員による、なりたい職業の発表です。スポーツでは、野球選手やテニス選手。僕らの業界では、映画の小道具を作る人…。夢を持つに至った経緯や情熱を聞き、ワクワクしました。

 「担任の先生に学ぶ楽しさを教わったので、先生になりたい。今必要なのは、先生の授業をより熱心に聞き研究することです」とのほほ笑ましい発表に、先生が照れておられた場面もありました。

 娘の将来の夢は鍼灸師になることです。「自分が治療を受けた体験や、両親にしてきた家庭用の灸の経験を生かし、漢方薬も含めた東洋医学も学んで、良い治療をしてみたい」との内容でした。そのために今していることは、「両親が受ける鍼灸治療を見学してノートにまとめること、体の仕組みを学ぶこと、本を出したいので日記を頑張ること、海外に広めたいので英語を学ぶこと」だそうです。

 発表後に、数人の保護者から「お嬢さんが開業したら家族で伺います」と声をかけていただきました。帰宅後、思いがけない反響を娘にも伝え、話題も広がりました。

生きるって?

 この機会を通じて、娘の学ぶ目的が明確になっています。何より、10歳ながらも自分の人生のために勉強している自覚が感じられ、クラスメートや保護者の方々と子どもたちの将来を応援し合う気持ちも伝え合えて、夫婦ともども心を揺さぶられました。

 1時間目の授業で谷川俊太郎先生の詩「生きる」を紹介し、「『生きる』って、みんなにとって何?」と尋ねた担任の先生。この日の最後に、一人一人の答えを、全員による即興の「クラスの詩」として披露してくれました。「仲間と学び合うこと」。それが娘の答えでした。(俳優・ケーナ奏者)

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