〈奥山佳恵さんの子育て日記〉21・ダウン症の次男をバカにする子なんて、一人もいない

(2021年5月14日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

奥山佳恵さんの子育て日記

写真

激しくブランコを押しながら、美良生の顔色もちゃんと見ている心優しきジャイアンたち

なぜ、みんなと同じ教室にいるのか

 「まだ普通級にいるの?」と聞いてきたのは、近所の上級生のお兄ちゃん。面倒見の良い子で、ずっと次男の美良生(みらい)のことを気にかけてくれている。「うん。いるよ」と答えつつ、この子に限らず聞きたいことだろうと思った。

 ブログにも同様の質問が届く。みんなと同じ学習ができないどころか手助けや配慮が必要な子が、能力に応じた場が用意されているのになぜ、みんなと同じ教室にいるのか、という疑問。うん、文字にすると確かに「なんで」と私でも聞きたい(笑)。

 その問いへの答えは、能力で人を分けることを突き詰めると、みんなの生きづらさにつながるから。最悪の結末が、相模原のあの事件なのだと思うから。

初めは悩んだ「インクルーシブ教育」

 私たちに「インクルーシブ教育」を教えてくれた方に「ダウン症だからといって分けないで」「みんなと同じ場所へ行って」と背中を押され、実践しました。初めは「本当にこれでよかったのか」と恐れおののく日々でした。

 月日は流れ、この春で4年生。コロナ禍で学童へ行く日数を減らし、下校後は私と2人で公園へ遊びに行くのが日課となり驚きました。美良生と一歩外に出ると、あちこちから声がかかるのです。

 「やあ」と答える次男も、みんなの名前をちゃんと言う。関わりあっているのです。気にかけてくれたのは、最初はクラスの優しい女の子たち。学年が上がるにつれ、その輪は男子にも広がり、不思議なことに、ヤンチャな男子ほど美良生を慕ってくれる。ドラえもんでいうと、みんな映画版ジャイアン。ガキ大将なのにとびきり優しい。

「分けない」結果が、この光景だった

 公園で会い、いっしょに遊ぶ。見ていると、みんな自然と美良生のできることを考え、美良生を中心に遊んでくれているのです。私はみんなが疲れやしないか、苦痛ではないかと気遣いしっぱなし。回数を重ね、やっと「あ、みんなも楽しんでくれてるのかな」と思えるようになった。家に遊びに来てくれるのも恒例に。何にもできない美良生をバカにする子なんて一人もいない。みんな、ありのままの姿を受け入れてくれている。「分けない」結果が目の前の、この光景だった。

 能力別に分けられた場を否定する気持ちは全くないし、私たちもいずれ選ぶ可能性もある。ただ、言えることは、居場所は自分たちで決められるということ。就学先を迷っている方に、わが家が一例になれたらいいなと思います。どんな子にも輝く笑顔あれ! (女優・タレント)

インクルーシブ教育とは

 障害のある人とない人が、可能な限りともに学ぶ教育。インクルーシブは「包括」「包み込む」などの意味。欧米などでは主流となっている。米国などでは障害児・者のほとんどが通常学校に通い、特別支援学校に通うのは特殊な事情のある5%ほどとのデータもある。

あなたへのおすすめ

PageTopへ