〈奥山佳恵さんの子育て日記〉22・いろんな人がいる場所で「まぜこぜ」だからできたこと

(2021年6月18日付 東京新聞朝刊)

奥山佳恵さんの子育て日記

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算数の宿題中。兄が赤鉛筆で書いてくれた答えの数字をなぞっています

デタラメ文字の天才記者現る

 わが家の小学4年生の次男美良生(みらい)はダウン症があっても、入学した時から、みんなと教室を分けることなく同じ場所で大きくなってきました。

 授業内容も一緒。宿題だって同じです。みんなと同じ教材で、次男ができることをする。たとえば漢字なら、漢字ではなくふりがなを書く。算数だったら計算ではなく、そこに書かれた数字を書く。先日、社会の「新聞を作ってみよう」の授業を参観したときは、黒板に書かれた先生のお手本を一心不乱に書き写していました。自分の手元は一切見ずに。デタラメ文字の天才記者現る、です。たまにしかそんな姿を見ない私はギョッとしましたが、同級生たちはとまどいもしない。驚かないことに驚く(笑)。

 「特性に合った場所でスキルを伸ばしたらいいのに、もったいない」という言葉をかけていただくこともあり、その気持ちもよくわかります。でも「場所」を分けてしまうと、「人」はかかわり合うことができない。うう、歯がゆい。なので私の理想はいろんな人がいる同じ場所で、それぞれの特性に合った教育を受けられること! これが真の「まぜこぜ」だと思う。

「仲良しけんか」の仲裁役に

 4年生ともなると、同級生は男子も女子も異性を意識し合って、お互いにちょっかいを出し合う。かわいいなぁと思って見ていますが、まるでリアル「トムとジェリー」。ヒートアップしすぎて戦場みたいになる時もあるけど、「仲良くケンカしな!」。

 「トムとジェリー」が勃発している同級生の間で、美良生がどんな立ち位置にいるかというと「中立国スイス」です。男子とも女子とも週替わりで遊んでいます。先日「男子」の週だったわが家に、今度は女子軍たちが突然攻めてきました。玄関先で勃発した「仲良しケンカ」に挟まれる中立国の美良生。さてこの局面にどう対応するかな、と見守っていたら、美良生は双方それぞれに「わかった、わかったから」となだめ始めたのです。それ、先生の立場じゃないか。私も美良生に倣って「わかった、わかったから」と続き、その場を収めました。漢字が書けなくてもケンカの仲裁ができたのは、まぜこぜでかかわりあってこられたから。これからもファイトだ中立国!

 まぜこぜの学校は多国籍になります。文化が交わり、刺激も知識も見識も増える。いつか子どもたちのいる場所が「分ける」鎖国文化から解き放たれる日がくるといいなぁ! (女優・タレント)

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