〈中倉彰子さんの子育て日記〉8・あっちゃん

(2012年7月20日付 東京新聞朝刊)

突然の病、別れ

 半月ほど前、私の友人のあっちゃんが突然、病に倒れ、数日前にこの世を去った。あっという間の出来事で、まだその事実を受け止められないでいる。

 あっちゃんは小、中学校の同級生。しばらく会っていなかったが、互いにママとなり、保育所で思いがけず再会。お迎えの時におしゃべりをしたり、お休みの日には、子ども連れで家に遊びに来てくれたりした。育児の悩みもよく話した。

 いつも明るく、笑顔を絶やさない彼女の周りには、自然とママさんたちが集まった。

 中学時代はクラス委員を務めるしっかり者で、社会人になってからも、仕事と育児をよくこなした。彼女の頑張る姿に、何度も勇気づけられた。

ママ友の支え

 彼女が倒れてから、保育所のママさん同士で支援体制をつくることになった。子どものお迎えや夕食の手伝いができる日を出し合い、一覧表を作成。みんなが一心に彼女の回復を祈り、子どもたちのことを心配していた。

 ご主人は看病と子どもたちの世話で、どれだけ大変だっただろう。そんな最中にも、私たちを気遣い、時折メールを送ってくれた。「皆さんが送ってくれる応援メッセージを、耳元で伝えて元気づけている」と。

 数日後、ご主人から悲しいメールが。薬や装置に頼りながらも精いっぱい頑張ったこと、最期は心肺停止と心臓マッサージによる蘇生の繰り返しだったが、家族が病院にそろうまで頑張ったこと。

 翌日、自宅に戻った彼女に会った。病院で見た時とは違い、穏やかな表情をしていた。ご主人は「何もしてやれなかった」と言っていたけれど、あっちゃんは優しいご主人と出会えて幸せだったに違いない。

 まだ小さな子どもたちが受け止めるには、あまりにも大き過ぎる事実。それを思うと、胸が張り裂けそうになる。

 どうか、お父さんの深い愛情の中で乗り越えて行ってほしい。

 もう少し大きくなったら、私の知っている彼女の事を、伝えてあげたい。いつも笑顔で優しく、何よりも、あなたたちのことをいつも気にかけていた。本当に、本当に素晴らしい人だったと。

 私にもいろんな事を教えてくれた。ありがとう、あっちゃん。(プロ棋士)