〈田中健さんの子育て日記〉30・ゴッドファーザーの悩み

(2017年12月29日付 東京新聞朝刊)

田中健さんの子育て日記

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マフィアのボスの役作りのため、娘との「接触」を禁じられている

 今回は「子育てをあまりしておらず日記」です。

 1月10日から、東京のDDD青山クロスシアターでマフィアのボス役を演じます。ジャニーズのユニット「ふぉ~ゆ~」の辰巳雄大(たつみゆうだい)君と元宝塚の香寿(こうじゅ)たつきさんとの3人芝居で、膨大なせりふとともに稽古に明け暮れています。

「娘への接近禁止令」再び?!

 食う・寝る・稽古! 帰宅して夕飯を済ませ風呂に入り仮眠。「そんな状態で子どもに関わってもらっても…」と家内に言われるこの頃です。

 しかし、家内いわく、こうした日常ですら「子育て」に役立っているそうです。

 職業はさまざま。僕ら芸能に携わる人間は、常に平常心でいられるとは限りません。人格が変わるほど普段の心を離れて気持ちを作る作業も仕事の一つです。家内は「理解し支えることも家族の役割で、さまざまな仕事や立場があると学ばせるのは大事な子育てだと思う」と言ってくれます。

 覚えている読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、2年前には舞台で殺人鬼の役を演じ、家内から「娘への接近禁止令」が発令されました。当時娘は小学2年生。舞台の内容や演じる役柄、僕の置かれた状態を家内が丁寧に説明していました。今回は、言わずもがなといった空気が流れていたので、4年生に成長した娘の状況への理解も深まっているように僕は思っていたのです。

 ところが、僕が眠っている姿などをしげしげと見つめていたり、一緒に遊びたい気持ちを我慢し、寂しくて泣いてしまった娘を家内が抱きしめたり、ということがあったようです。「芝居の気持ちが作れないから、お父さんと百人一首やオセロしたくても誘わないように。仮眠中やせりふの練習中は、起こしたり話しかけたりしないように」と、家内が娘を慰めながら具体的に話をしてくれました。

舞台まで、家族一丸で

 舞台の稽古と公演中は健康第一。家族が風邪やインフルエンザなどにかかっても困ります。家族共に緊張感を持ち、歩調を合わせて過ごす2カ月間となります。

 千秋楽は2月4日。2年前の殺人鬼役は「役とはいえ怖い」と娘は観劇に来ませんでした。今回は、マフィア役とはいえコメディーなので娘も見に来てくれるそうです。

 いわゆる「善人」の役柄だと平常心で、もっと普通に過ごせるのですが、なかなかうまい事にはなりません。年末年始の数日の稽古休み、どこまで素に戻るべきか悩ましいところです。(俳優・ケーナ奏者)

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