〈坂本美雨さんの子育て日記〉55・娘が誰を好きになっても
映画「きのう何食べた?」に感動して
朝ドラ「おかえりモネ」に出てきた2人だ! ということで娘が見たがった「劇場版 きのう何食べた?」を娘と見に行き、じーんとして、今度はドラマを見返しているわが家。今さらながら、なんていい作品なんだろう。「ごはん」で紡がれる、ふたりの日常。ゲイのカップルであるということにまつわる葛藤(親や仕事場にカミングアウトするかしないか、正式な結婚という形がまだ難しいことなど)も自然に描かれていて、娘にもできるかぎり背景を説明しながら見進めている。(財産の相続をさせるためにパートナーを養子縁組する、という件はまだ難しかった模様)
娘の身近にも男性カップルはいるので、自然なことと受け入れている一方、「女の子だから」「男の子なのに」という概念も保育園のお友達や社会の影響か、じわじわとにじり寄ってきている。私はフェミニストとは言えないけれど、娘が大きくなるにつれてジェンダー教育や女性の立場に関して、古い法律や風習に縛られたままじゃだめだ、と強く思うようになっている。
「幸せになるんだよ」と言うたびに
娘が誰を好きになっても愛し愛されて、自由を認められて生きていけるだろうか。社会的に弱い立場になったら、手を差し伸べてもらえるだろうか。娘の大きくなるまでに、いやあと数年のうちに、変えなきゃいけないことがたくさんある。あと10年ちょっとで社会に解き放たれてしまうし、自分も元気で動けるのはあと30年?くらいだろうか。時間がない、といつも焦ってしまう。
自分が死んでも娘が幸せに生きていける、と安心したいのだ。自分でも重苦しいと思うが、「幸せになるんだよ」と娘に言うたびに、涙が出そうになる。祝福の言葉のはずなのに、それを口にするときの母親の泣きそうな顔が娘の記憶に残らなければいいなぁと思う。
衆院議員の小川淳也さんと初めて会った時、娘と目線をそろえて、まっすぐ彼女を見て「いい社会にするからね」と伝えてくれた。シンプルで、とても重い約束。この約束を迷いなくしてくれる人に今まで出会ったことがなかった。こんなに覚悟が決まってる人が本当にいるんだな。それならば、わたしもできることを最大限やろう。諦めないで、やろう。「きのう何食べた?」の話からだいぶそれたけれど、わたしたちの日々の小さな暮らしと、社会、政治は、すべてがつながっているんだなと改めて実感している。(ミュージシャン)
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