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「先生こそ、LGBTを勉強してください」学校で傷つく子がいなくなるように

著書「僕が夫に出会うまで」を刊行した七崎良輔さん

小学校時代の経験を振り返る七崎良輔さん

先生がみんなの前で「七崎くんって『オカマ』なのかな?」

 小学校の時の「帰りの会」。2年生だった七崎少年は突然、担任の女性教諭に前に呼ばれた。教諭が皆に「七崎くんって、『オカマ』なのかな?」と問いかける。静まりかえった教室で、クラスメートが次々に言う。「オカマじゃないと思います」「『ふつうの男の子』です」-。

 男性同性愛者(ゲイ)の七崎良輔さん(31)=東京都江戸川区=の著書「僕が夫に出会うまで」(文芸春秋刊)の冒頭には、こんな場面が出てくる。七崎さんは、幼少期から「女の子」っぽいしぐさや言葉遣いで、同級生たちから「オカマ」とからかわれていた。それを見た担任教諭が止めさせるために取った行動らしかったが、七崎さんにとっては、胸がキューッと締め付けられる苦い思い出だ。この時、むしろ「自分は変なんだ」「普通じゃない」と思い、深く傷ついたという。

「男/女らしくない」 今もいじめられ、からかわれる子が

 LGBTなど性的少数者は、最近知られるようになってきたが、学校現場では今も、からかわれたりいじめに遭ったりしている当事者の子がいる。助けを求めた先生の言葉に追い打ちをかけられた、という人も。

 七崎さんは、1987年北海道生まれ。幼少期の気づきから進学を機に上京、LGBTのための結婚式のプロデュース・企画会社を設立して、2015年に「夫夫(ふうふ)」になった4歳上の男性会社員と出会うまでをエッセーにまとめ、今年2月からウェブサイト「文春オンライン」で連載した。

 書籍化される前にウェブサイトで読んだ東京都内の小学生の親からは、子どもがまさに今、LGBTであることでいじめられ、学校側に訴えても対応してもらえないという声が届いたという。

七崎良輔さんの著書「僕が夫に出会うまで」(文芸春秋刊)_

七崎良輔さんの著書「僕が夫に出会うまで」(文芸春秋刊)

 性への違和感は、早ければ小学校に上がる前に自覚する子もいる。だが、学校現場での男女分けが根強く、「男/女らしくない」と、からかいやいじめの対象になってしまうこともある。文部科学省は2015年、LGBTの児童生徒への配慮を求める通知を出したが、学校での教育内容の基準となる学習指導要領にLGBTや性の多様性に関する記述はない。子どもや教職員が知識を身につける機会があるとは限らないのが現状だ。

「生徒を被害者にも、加害者にもさせたくない」と独自授業

 こうした中、LGBTを独自に教える学校も出てきた。

 中高一貫校の東京都立両国高付属中(墨田区)は2017年度から、1年生の道徳の授業で多様な性のあり方を取り上げている。基礎知識などの授業のほか、一昨年度は出生時の性別とは異なる性で生きるトランスジェンダーの当事者、昨年度は弁護士を招き、生徒たちに経験談や、LGBTを取り巻く現状について話してもらったという。

 授業を企画した当時の副担任、武田聖教諭(63)は「正直、以前は(当事者について)『趣味でやっているのでは』と思っていた部分もあった。でも趣味や嗜好(しこう)の話ではないと知り、子どもたちに伝えないといけないと考えた」と振り返る。「学校で長く教えていると、当事者だなと思う子は結構いる。こうした子がいじめや差別を受けないようにしたい。皆が知識を持って、打ち明けられた時に気持ちを受け止められるようにしなければ」

 一橋大学(東京都国立市)で2015年、同性愛者だと同級生に暴露された男子大学院生が転落死したニュースにも、背中を押された。「生徒を被害者にも、加害者にもさせたくない」と思ったという。

LGBTの授業では生徒が真剣に聞き、意見を出していた=東京都立両国高校付属中で

LGBTの授業では生徒が真剣に聞き、意見を出していた=東京都立両国高校付属中で

 今年2月にあった同校の授業をのぞくと、LGBTであるがゆえに受ける不利益や差別、それらをなくすにはどうしたらいいかを生徒たちが真剣に話し合っていた。「結婚ができないよね」「就職の際に不利かも」「恋バナ(恋愛の話)についていけない」「制服に迷う」…などの声が上がり、「親に言ったら拒否されるかも」「差別と区別が分からない」「まず正しい知識を持つことが大事」「LGBTとくくるのではなく、自然に認め合えるようにしたい」といった意見が出た。

先生の「善かれと思って」の言動でも、傷つけることがある

 授業を担当した寿原(すはら)友理子教諭(41)は「子どもたちの声に考えさせられることが多かった」と話す。「将来、いろんな人たちと共生していく子どもたちには必要な学習。教える私たちも、LGBTを勉強していかないと」と、あらためて感じたという。

 先の七崎さんは、小学4年の時にも、担任の男性教諭に「そのまま大人になっちゃったら大変だよ」と言われ、「全否定された」と感じたエピソードを著書でつづっている。

 先生の言動が、たとえ善かれと思ってしたことでも、LGBTの子たちを傷つける。これまで私が取材で話を聞いた当事者の中にも、学校に居場所がなくなったり、将来を不安に思ったりして、不登校になったり、命を落とすことまで考えたりしている人がいた。

 だから、都立両国中の先生たちのように、性の多様性を教えることの大切さに気づき、伝える姿勢は心強く感じる。 

 七崎さんが取材中に繰り返した「先生こそ、勉強してください」という言葉を、多くの学校現場に知ってほしいと思う。