〈中倉彰子さんの子育て日記〉41・ジジVS.孫

(2016年1月22日付 東京新聞朝刊)

礼儀

 年末、久しぶりに父(68)がわが家に遊びにきました。母が病気で他界してから8年。父は1人暮らしで、株と時々旅行を楽しんでいるようです。一番の趣味は将棋。新聞や雑誌の将棋欄を切り抜いてファイルしたものが、本棚にあふれています。棋力はアマチュア三段。以前は毎週のように将棋道場に通っていましたが、目標の四段になるのが難しいと悟り、最近は足が遠のいているようです。昔から、勝負にこだわるところがあり、その辺りはほどほどに、もっと将棋を楽しめばいいのにと思うのですが…。

 父とシン(5つ)が盤を挟むと、お姉ちゃんたちも興味深そうに集まってきます。立って見ようとする子どもたちに父は「ほら、ちゃんと座って」と、礼儀を教えてくれるのはありがたいです。さて、対局の方は、駒落ち(上位者の方の駒を減らして、ハンディをつけること)で、1局目は父の勝ち。2局目も父が勝ちそうでしたが、私がアドバイスして、なんとか父の玉を捕まえシンが勝ちました。シンも父も、とてもうれしそう。おじいちゃんと孫が将棋を通して交流する姿に、ほっこりしました。これが将棋の良いところですよね。子どものころ、私に将棋を教える時は厳しかった父ですが、この日はとても楽しそうに、孫に将棋を教えていました。昔とずいぶん違うぞ!なんて。

手は抜かない

 父が帰ったあと、お姉ちゃんたちに、今日の将棋の感想を聞いてみました。「ジジ、手を抜かないなーと思った」とマイ(10)。私が「もしジジが手を抜いていたら、マイも指してた?」と聞くと、マイは「うん。勝てるから」ですって。マキ(7つ)は「ジジが何度も、『シン君、強いなあ』って言ってるのが面白かった」。私が「マキは指したくなかったの?」と聞くと、「うん、負けるから」との答え。二人とも、ジジが自分を勝たせてくれる人かどうかを、しっかりと見極めていたようです(笑)。シンはどんどん挑戦するのですが、お姉ちゃんたちはなかなか…。

 父も、いろいろと悩みながら私と妹に将棋を教えていたのかもしれません。「彰子はよく口答えをしてきた」と父は何度も言います。よっぽど印象に残っているようです。

 さて今度、私の会社のブログ(「株式会社いつつ」で検索)で「2人の女流棋士を育てた父」というテーマで、父のインタビュー記事を掲載する予定です。そちらの方も併せてお読みいただけるとうれしいです。(プロ棋士)