〈中倉彰子さんの子育て日記〉42仕事と家庭のオンとオフ

(2016年2月26日付 東京新聞朝刊k)

中倉彰子さんの子育て日記

子は親を見てる

 働くママの悩みは、子どもとじっくり向き合う時間が少ないことでしょうか。私は仕事と家庭のオン・オフが下手だなぁとよく感じます。人には「将棋は気持ちの切り替えが大事で、特に負けた時は、反省したらすぐに気持ちを切り替えて次に向かいます」なんてエラそうに言っているわりに、自分の仕事のオン・オフは失敗ばかりです。

 普段は東京で活動していますが、会社の事務所機能が神戸にあるため社内でのやりとりは、ほとんどが電話やメール。ある日マキが「ママのまね」と言って、私がスマホを指で動かし、「ふんふん」と上の空で返事をしている物まねをしてみんなを笑わせていました。「ママ、いつもそうだよねぇ」と大きくうなずくマイ。「えーそんなふうにしてるかなぁ?」と言ってはみたものの、心の中では冷や汗。確かに仕事のことを考えたり、届いたメールにすぐに返事を書こうとして、家事の最中にピコピコしたりしていることもありました。

 子どもは親をよく見ているものですね。気をつけないといけないなぁと思っていたとき…夕食作りや、家事で忙しい時間帯に、仕事のラインが。急いで答える必要もないのに、心に余裕がないまま、反射的に答えてしまいました。でもそのことが原因で、相手を怒らせてしまう事態に…。その日は家事も心ここにあらずの状態になり、子どもによくないと、深く反省しました。

打ち合わせは定時に

 最近実験的に、毎日定時に会社と家をテレビ電話でつないで打ち合わせをできるような環境にしました。在宅ながら会社にいるような感覚です。定時にしたのは、仕事のオン・オフを明確にしてみようとの思いもあります。その結果、夕方からは家事、と切り替えができるようになりました。仕事が終わらない場合は、夜中に作業をします。以前は子どもたちが完全に寝てからそっと布団から出ていましたが、最近は「ママがんばってね」と、子どもたちが布団の中から送り出してくれることもあります。家族の応援にほっこり心が温まります。

 泊まりの出張から帰った翌日。子どもたちと家でゆっくり遊びました。将棋の駒を高く積む競争をしたり、ピラミッド風に積み上げ面白い形を作ったり。でも「これ将棋イベントに使えないかなぁ」などと考えている自分が…。仕事のことは忘れて、もっと子どもたちとの時間を楽しまないと(苦笑)。オン・オフ切り替えは、私の子育ての大きな課題です。(プロ棋士)

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