〈坂本美雨さんの子育て日記〉75・娘は私を守ろうとしてくれている

(2023年12月13日付 東京新聞朝刊)

ハリポタ沼の住人になった娘

親子そろって「ハリポタ沼」へ

 今、娘の人生の大部分を占めているのがハリー・ポッターだ。私は全く通ってこなかっただけに、ついていくのに必死だが、いつのまにか彼女は「ハリポタ沼」の住人になっていた。それだけ熱中できるものが見つかったことは喜ばしい。クラスにハリポタオタクの友達もできてうれしそうだ。

 以前から映画は好きだったけれど、本格的なきっかけは舞台ハリー・ポッター。舞台は映画の19年後の物語で、主役はハリーと因縁の相手ドラコ・マルフォイの息子たち。彼らはなんと親友になるのであった。うぉぉぉ、そんなに詳しくなくても、それだけで胸熱である。

 1回目は私の韓国出張中に娘と夫が行ったのだが、あまりの素晴らしさに、私が帰って来たらすっかり娘はスリザリン寮生になっていた。取り残された私も、追いつこうと先日舞台を観に行き、やはり虜になってしまった。

 3時間40分という長さではあるがすこしも飽きさせないスピード感、ファンタジーな演出に、どっぷりその世界に浸ることができる。息子たちの友情と、父と子の、時にすれ違う愛に胸が揺さぶられる。受け継がれるものと、子が選んでいくその子だけの人生、というテーマは人ごととは思えないものでもあった。

 ハリーの役は何人かの役者さんが演じており、今回観劇した大貫勇輔さんのハリーの上品な色気にくぎ付けになった。来年はまた違うハリーを観に行こうと思う。

タクシーでトラブル その後で

 この舞台でもキーとなるのは、子が親を守るということであるが、どれだけ娘が私を守ろうとしてくれているか、時折びっくりすることがある。先日、タクシーでのトラブルに遭ったときのこと。腹が立っていた私は、その日の晩ご飯の席で人にグチり始めた。すると横にいた娘が急に血相を変え、「なんでそういうこと、先に言ってくれないの!」と怒り始めたのだ。

 なんで急に、と驚いたのだけど、少しして理解した。彼女はきっと、母親のことはなんでも分かっていると思っているのだ。何かあったら一番先に知りたい、いや知るべきだと思っているし、自分がなんとかしたい、と思ってくれている。なんて愛情深いのだろう。

 彼女と私は親子というよりやっぱり相棒だ。彼女の人生に起こることは誰より先に知りたいと思っているのと同じように、彼女も感じてくれているんだ(少なくとも今はまだ)と知り、感謝を深めたのだった。こんな相棒がいることがとても心強い。

坂本美雨(さかもと・みう)

 ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。