いじめ防止法改正案が迷走中…教員懲戒など具体策が大幅削除 遺族から「命を守れない」と反発
当事者にヒアリング重ね、まとめた「たたき台」が…
いじめ防止法の付則には「施行後3年」の2016年をめどに、必要な措置を講じると明記されているが、既に5年以上が経過した。いじめ自殺は後を絶たず、学校や教育委員会などの事後対応のまずさが相次ぐ中、実効性のある法改正が求められている。
勉強会は昨年夏以降、子どもをいじめ自殺で亡くした遺族や教育関係者にヒアリングを重ね、同11月に改正案の「条文イメージ案(たたき台)」を公表した。学校いじめ防止基本計画の策定、各学校へのいじめ対策委員会の設置、いじめ対策主任の新設など学校現場の取り組みを明確化した。
「負担増える」「現場が萎縮」 新規項目ほぼ削除
ところが、座長試案では、教育関係者から現場の負担が増えるなどと懸念の声が上がっているとして新規の項目をほぼ削除した。教職員がいじめを放置したり、隠蔽(いんぺい)するなど適切な対応をしなかったりした場合の懲戒規定も「現場が萎縮する」との理由で消した。
子どもの命に関わる「重大事態」が起きた場合の調査委員の人選については、現行制度では利害関係者を全て禁止しているが、座長試案では「利害関係のない者を2名以上含まなければならない」と後退させる表現になった。
遺族有志は意見書「たたき台の内容で法改正を」
全国の遺族有志は座長試案に反対し、勉強会に連名で意見書を提出した。「条文イメージ案にはいじめ対策不備を改善する内容が含まれていると強く賛同してきた。イメージ案の内容で法律を改正してほしい」と訴えている。
遺族有志の一人でNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さんは「現行法を現場の先生が理解していないのでいじめがなくならない。法律に実効性を持たせるための改正でなければ、子どもの命は助けられない」と話している。
いじめ防止対策推進法
大津市の中2男子が2011年に自殺した事件を機に、自民、民主などが法案を共同提出し、13年9月に施行された。いじめ防止と実態の調査・対応について学校、自治体、国の責務を明記。いじめを「児童、生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義し、インターネットへの悪質な書き込みや仲間はずれなども明確に禁じた。