「スクールハラスメント」相談窓口を作ってほしい 不登校だった20歳が署名提出
担任から被害…でも教委は「私学の指導権限はない」
署名は、インターネットサイト「Change.org」で7月17日~8月17日に実施。先月末までに文部科学省などへ提出した。
佐藤さんは、東京都世田谷区の私立中高一貫校で中2の冬、担任から「離婚家庭の子どもだからだめなんだ」などと長時間にわたり言葉の暴力を受け、適応障害や睡眠障害を起こし、不登校になった。
都教委や区教委に相談したこともあったが「私学を指導する権限はない」と受けてもらえず、大学進学後に法務省「子どもの人権110番」へ相談すると「在学中でなければ受けられない」と拒否されたという。どんな立場の子どもの相談も受け、権限を持って解決する行政機関が必要だと痛感し、署名を実施した。
8割が相談しても「効果なかった」「状況が悪化した」
署名と同時にハラスメント被害を尋ねるアンケートも実施。59人が回答し、8割以上が学年主任や担任、スクールカウンセラーなどへ相談したが、効果があったのは1割程度で、4割超が「効果がなかった」、3割超は「かえって状況が悪化した」と答えた。
コメント欄にも「教師から屈辱的な対応をされ、負の記憶として残っている」「陰湿ないじめに遭い、担任は知っていたが何もしてくれなかった」など数十の事例が寄せられた。
佐藤さんは「こんなに苦しんでいる人がいるのに行政が対応していない。相談窓口はたくさんあるが、被害者は愚痴を聞いてほしいのではなく、解決を願っている。求めに合っているのか考え直してほしい」と語った。
自殺を考えている子へ「1回だけ考えてほしい。君はここで終わっていいのか」
中学3年から高校卒業までほぼ不登校状態だった佐藤さんは「何度か自殺を試みたことがあった」という。学校に行きたくても教師が怖くて体が動かない。頑張って登校すると「クラスメートから『幽霊』と言われ、『いつ学校やめるの』と聞かれ、しまいには自分が信じられなくなった」
しかし、自殺しようとした時に、ふっと「まだなんじゃないか」という思いがよぎった。「こうなった自分には、何か役割があるんじゃないか」。それが、苦しい子どもたちのための今回の署名活動につながっている。ニュースで子どもの自殺が報じられると「行き遅れてしまった」という思いも湧き上がるが、同時に「だからこそ役割を全うしよう」という気持ちが強くなった。
「つらくて自殺を考えている子どもたちに『生きていればいいことがある』とか無責任なことは自分は言えないが、1回だけ考えてほしい。君はここで終わっていいのか。自分自身に1回、問うてほしい」
今回の署名で、自分の活動としては一区切り付けるつもりだ。「道はできている。後を継いでくれる人はいる」と信じている。