「もぐもぐタイム」に意見続々 給食中のおしゃべり禁止、先生は苦悩「時間がない、食育に手が回らない…」
導入の理由 「時間内に食べ終わるため」
文部科学省の学習指導要領で給食は「学級活動」に位置付けられ、学級担任の裁量に任される部分も多い。「もぐもぐタイム」を導入している教室も、していない教室にもそれぞれの理由がある。
本年度から全校で実施している都内の小学校の女性教諭(41)は「食べ残しを減らすのが目的。職員会議で『最初はおしゃべりしながら食べたいよね』という意見が出て、最後の5分に統一した」と説明する。
やはり導入している葛飾区立小の女性教諭(64)は「最初の10分をしゃべらず食べると、1年生でも7割以上の子が20分で食べ終わる。口に物を入れて話さないというのは礼儀として教えている」。
40年前から先輩教諭らが行い、当時は子どもたちに完食も強制していたという。
板橋区立小の女性教諭(46)は「口の中に入れたまま話すと、食べ物を飛ばしてしまう」と衛生面の視点からも必要との考えだ。
みんなでわいわい 苦手なものも食べられる
逆に東京・多摩地区の小学校で2年生を担任する女性教諭(60)は、給食を子どもとのコミュニケーションの場と位置付け、おしゃべりを楽しむ。「みんなでわいわいしていると、普段食べない物にチャレンジできることも。体力が付いてくると食欲も旺盛になってくる。変なきまりで子どもを縛らない方がいい」と話す。
一方、「あと10分あれば、もぐもぐなしでも食べられる」との声も複数あった。今回、話を聞いた教員全員が「給食時間は短い」と言う。40分の給食時間のおよそ半分は配膳や片付けの時間。食事時間は20分という学校が多い。
4時間目を早めに切り上げたり、配膳をシステム化したりして「30分確保する」という教員もいた。だが、多くの学校にとって「あと10分」を捻出するのは難しい。葛飾区の女性教諭は「延ばせば昼休みが短くなったり、下校が遅くなったりする」とこぼす。
「公教育が”食事”に踏み込むべきではない」
先生にとっても給食時間は忙しい。板橋区立徳丸小の林真未教諭(55)は「子どもたちが食べている間に、連絡帳の返事を書き、他のクラスとの連絡に立ち、午前中に起きた子ども同士のトラブルの仲裁をし、おかわりの対応をする。自分が食べる時間は5分」と余裕のなさを訴える。
2008年に学校給食法に盛り込まれた食育推進の影響も指摘されている。複数の教員からは「外国語や道徳が教科化され、食育まで手が回らない」という声もあがる。もぐもぐタイムの広がりには、こうした現場の苦心がにじむ。
都内の小学校で2年生を受け持つ宮沢弘道教諭(42)は「食べる食べない、しゃべるしゃべらないは個々に委ねるべきだ。栄養学の部分は教えても、食事、排せつ、睡眠といったプライベートに公教育は踏み込むべきではない」と食育のあり方に疑問を呈した。
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