青信号の横断歩道なのに…子どもの死亡事故が多発 外出自粛が車のスピードに影響か 悩む警視庁「注意喚起の場がない」
井上真典 (2020年5月25日付 東京新聞夕刊を一部修正)
首都圏1都3県の緊急事態宣言は25日夜に解除された。休校となっていた小中学校の再開を控え、警視庁は、子どもの交通事故への警戒を強めている。春の交通安全イベントが軒並み中止となり、思うような啓発活動ができていないからだ。東京都内では人身事故の全体件数は減少しているものの、横断歩道を渡っていた子どもが車にはねられて死亡する事故が多発。同庁幹部は「親も運転者も自分たちが子どもを守るという意識を持ってほしい」と訴えている。
都内の人身事故 昨年より件数は減ったが、死者が増加
東京都内で起きた人身事故は、24日現在で計9261件と前年同期比3279件減だったが、死者は54人と前年同期比で8人増えている。外出自粛要請で交通量が少なくなり、速度超過の車が増えたことが主な原因とみられる。
江戸川区で今月7日、自転車に乗っていた中学1年の男子生徒が車にはねられ死亡するなど、これまでに子ども4人が死亡している。4人はいずれも横断歩道を青信号で渡っていて事故に巻き込まれていた。
例年、都内の多くの小学校で入学式の後、保護者と新1年生が警察官らと一緒に横断歩道の渡り方を学ぶ催しを実施している。しかし、今年は春の全国交通安全運動に合わせた啓発イベントの多くが中止となり、子どもたちへの注意喚起の場がなくなってしまった。ある警察署の幹部は「学校が再開した後も、交通安全の啓発活動を行えるかどうかは白紙の状態。例年やっている注意喚起ができない」と頭を抱える。
小1の事故が増えるのは「5、6月」ももクロ動画で啓発
警視庁がまとめた過去5年間の累計によると、4~6月に歩行中の新1年生134人が人身事故に遭っている。6割強の84人が道路横断中の事故で、下校時間帯の午後2~4時台に集中している。
学校関係者らが登下校に付き添う4月は27人だが、5月は46人、6月は61人と入学後の3カ月間でだんだん増える傾向がある。警視庁の担当者は「例年だと4月は緊張感があるが、友達と外に出る機会が増える5月、6月に事故が増えている」と話す。
自宅で交通安全を学んでもらおうと、警視庁は、広報大使を務める人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」が横断歩道の渡り方などを教える動画を公開している。担当者は「学校再開を前に、子どもと一緒に動画を見て、横断歩道の渡り方を学ぶ機会にしてほしい」と保護者に呼び掛けている。