休校で「子どもの防犯意識が緩んでいる」 学校再開に向けて、安全教育の専門家が訴える”7つの危機”

 首都圏の多くの学校で、今月末までは休校が続く見通しですが、一部では分散登校など学校再開に向けた準備が進んでいます。登下校など子どもだけでの行動は久しぶりのこと。NPO法人「体験型安全教育支援機構」代表理事の清永奈穂さん(49)は「3カ月近く、ほとんどの時間を家で過ごしてきた子どもたちの防犯意識が緩んでいます。家庭であらためて防犯について考え、実践して」と注意を呼びかけています。
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臨時休校が始まる直前の登校風景。久しぶりの登校になれば、休校前とは違った注意も必要だ=2月28日午前、浜松市で

  清永さんによると、今、子どもたちは「7つの危機」に囲まれています。それぞれ解説してもらいました。

①人々の間に蓄積されたストレス

 外出自粛や経済的問題、感染への不安などから、負のエネルギー、ストレスが多くの人にたまっています。親子で笑いながら歩いていたら「不要不急なら外に出るな」と怒鳴られた知り合いがいます。性犯罪の被害報告が増えているエリアもあるそうです。自らも外出を控えていた性犯罪者が、衝動を抑えきれず外に出るようになったと考えられます。

②人出が減っている

 外出を控える動きはこれからも続くでしょう。街から人の目が少なくなるということは、不審な行動を抑止する視線も減るということ。子どもたちへの不審な声がけ事案や性的被害が増えることが危惧されます。

③マスク着用の常態化

 感染防止策でマスクの着用が推奨されています。これまでだったら「暑いのにマスクを着けているのはおかしい」と怪しまれたのが、誰もがマスクをしていることで不審がられずに子どもに近づきやすくなっているのです。

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保護者と通学路の安全を点検する子どもたち=埼玉県八潮市で(清永さん提供)

④見守りボランティアの減少

 登下校時に、交差点に立ったり、犬の散歩などで外に出て、子どもたちを見守ってくれていた高齢者が、休校とともにいなくなりました。学校再開後も高齢者が外出を控えることで、通学路の安全を見守る人が少なくなるでしょう。

⑤多忙な先生たち

 例年だと、春は防犯教室などで子どもたちの意識を高める時期でしたが、それができませんでした。休校中の学習の遅れを取り戻そうと、先生たちは必死です。防犯や事故防止などに気が回らないことも考えられます。

⑥登校する子どもの分散

 分散登校や時差登校により、通学路を同じタイミングで通る子どもの数も減ります。子ども同士で周囲に注意し合う共同防御力が弱くなるということです。

⑦子どもが蓄積していた危機意識の希薄化

 これまで子どもたちは、通学路や習い事に行く途中、人目につきにくい駐車場や路地などで自分たちで注意しながら歩く習慣を身に付けてきました。ところが、長い休みでその感覚が鈍り、外出するにしても保護者と一緒で守られていたために、自分で危機を回避する力が弱まっていると思われます。

7つの危機から子を守るために 清永さんのアドバイス

 では、7つの危機から子どもを守るために保護者はどうすればいいのでしょうか。清永さんは以下のようにアドバイスします。
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NPO法人「体験型安全教育支援機構」代表理事の清永奈穂さん

 久しぶりの登校でうれしくてきょろきょろしていたり、勉強の疲れでぼーっと歩いていたりする隙を犯罪者が突いてくることも考えられます。登下校時だけでなく、外出時には必ず防犯ブザーを持たせてください。見守りの目が少なくなっていることを子どもに伝え、可能な限り、2人以上で行動させてください。新1年生は、登下校の時間帯に親子で通学路を歩き、死角になりやすい、歩道が狭いなどの危険箇所、不審者に声がけされた際などに駆け込める場所をチェックしてください。

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ランドセルを背負い、全力で走る練習をする子どもたち(清永さん提供)

 いざという時に役立つのが「安全基礎体力」です。全力で走って逃げる、きっぱり断る、大声で叫ぶ。遊びや練習を通じて身に付けておいてください。子どもたちは外出自粛で体力が落ちています。重いランドセルを背負うのも久しぶりという子もいるでしょう。マスク越しに大声を出しても響きにくいことにも注意が必要です。


安全基礎体力」について詳しく→入学シーズン間近!防犯教育の専門家に聞く「犯罪に遭わないために、親子で確認したいこと」


 感染防止のために人と人との距離を取りましょうと言われる中で、むやみに近づいてくる、しつこく話し掛けてくる人には要注意。不審な声がけに対しては、大人が捕まえられない距離(1.5~2メートル)まで離れて「結構です」などとはっきり断りましょう。

図解 「7つの危機」から子どもを守るポイント

 イライラしている人がいる一方で、助けてくれる大人もたくさんいます。子どもたちには「むやみに怖がらなくていいけど、注意してね。何かあったら、必ず大人に伝えてね」と教えてあげてください。

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  • 匿名 says:

    自粛で、以前より人が家にいる事は多くなり、空き巣などは防げるようですが、登下校中の子ども達には気が回りませんでした❗
    あちこちにシェアさせて頂いています。
    そして、子ども達もマスクをしているので緊急時に声を上げても届きません❗
    屋外の登下校中もマスクが必要でしょうか…?

      
  • 匿名 says:

    子供達の下校の様子を見ると、分散登校や席を離れて座っていても、仲の良い子供同士はやっぱりくっついて歩いています。
    コレを見ると、学校の努力は何だろうと思います。
    朝のスクールゾーンへの車の侵入禁止時間に登校する方が、交通の面や大人の目の多さで安全なのではないかと思います。
    感染症のリスクばかり考えていると、大切な物を見落としていないか心配です。

      
  • 匿名 says:

    誰も不審者にみえると、人間不信になる。

    見るからに不審者ならわかるけど、優しい雰囲気で優しく近づいてきたら、子どもは何を基準に不審者と判断すればいいのか。親も教えられない。誰も信じられなくなるのもよくないし、難しい。

      
  • 匿名 says:

    子供が被害者になる心配だけでなく、「加害者になる」ことも心配です。
    医療従事者の子や感染者が出た家庭や周辺の子、マスクを用意できない子、喘息持ちなどの子が学校で避けられたり、イジメられたりするようなことが各地の小学校で多発すると思います。
    今回の場合、イジメ側の親が「安全・安心を求めるのは当然」と子供の行為を弁護するでしょうから、暴走がエスカレートする可能性が高いです。

      
  • 匿名 says:

    とても大事な情報をくわしく具体的にお知らせくださっていると、思いました。
    末っ子が中学3年。でも3人とも女の子なので、こわがらせないようにこれからますます自衛がの心得が、大事になること 教えていきたいし、子どもたちを守れる大人に親子でなりたいです。

      
  • 匿名 says:

    問うべきは子どもの防犯意識?ではなく、おとなの犯罪、おとなによる子ども搾取ではないかと思います。

      
  • 匿名 says:

    粕屋町教育委員会がフェイスシールドを小学生、中学生に使用させてます。専門家、医師に使用にあたって健康に被害がないかも確認せず、自分達はもちろんフェイスシールド使用していません。マスクもしているのに。助けてあげて下さい。殺す気としか思えません。学校も安全ではなくなった事です。

      

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