常総市に、茨城県内初の公立夜間中学 10~70代、多様な国籍の新入生20人「学びたい思いは同じ」
外国人が市の人口の9% 「多文化共生」掲げ開校
国は、都道府県に1校以上の設置を目指す方針としているが、公立夜間中学は現在、10都府県にしかない。常総市によると、水海道中の夜間中学は34校目という。
常総市内には食品などの工場が多く、日系ブラジル人らが働いており、外国人が人口の9%を占める。このため、市は「多文化の共生」を掲げて開設を決定。入学式は4月の予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で6月にずれ込んだ。
外国人は20人中14人 コロナで2カ月遅れ入学式
新入生20人のうち、外国人生徒は14人、日本人が6人。国籍の内訳は、ブラジルが最多の9人で、ペルーとフィリピンが2人ずつ、ネパールが1人。年齢層は10代~70代までと幅広く、ほとんどが市内や近隣市から通う。
日課は、平日の午後5時25分から午後8時45分までで、昼間の中学校と同様の各教科を学ぶ。
入学式には、新入生17人と家族、教員らが出席した。服部仁一校長は「さまざまな理由で十分な義務教育を受けられなかった人たちが、勉強し直したいという思いを応援する」と語りかけた。
新入生代表の中村彩綾さん(20)は「年齢も国籍も振り返る道もさまざま。ただ全員が共通して学びたいと願っている。再び機会を与えてくれた思いに応え、勉強することを約束します」と誓いの言葉を述べた。
新入生「漢字覚えたい」「中学で不登校…高卒資格を」
年齢も国籍も異なり、それぞれ事情があった新入生たちは、もう一度学び直せる喜びを口にした。
「学校は小学3、4年生までしか行けず、いつか勉強したいとずっと思っていた。こんなの、してもらったことがない。夢の世界みたい」。ブラジル国籍のタナベ・ミサコさん(74)は、入学式を感慨深そうに振り返った。日系2世で、11人きょうだいの長女。子どもの時から親の農業の手伝いや炊事、洗濯、きょうだいの世話に追われた。約30年前に来日し、パン店などに勤務してきた。「もう年を取ったから行けるかな」と入学を決めた。
「平仮名と片仮名は大丈夫だけど、漢字が分からない。日本では漢字が分からないとだめ。新聞や本を読めるように、漢字を覚えるのが夢」と話す。
ブラジル国籍のアサヌマ・デ・オリベイラさん(44)は、18歳で来日。「ビーチ、富士山、筑波山、古い建物…。日本はきれいで大好き」といい、常総市に20年以上暮らす。
母国では高校を卒業し、日本語もある程度は話せる。しかし、読み書きはできず、銀行や郵便局に行った時に困るという。「もっと日本語を上手になりたいし、読むのも書くのも覚えたい」。息子が同じ中学の昼間に通い「負けないように頑張ります」と笑った。
下妻市の主婦の平塚悠里さん(29)は小学校時代から休みがちで、いじめで中学校は不登校になり、高校も中退。「高校卒業の資格がほしい」と思っていたところ、夫から夜間中学の開設を教えられた。家族も通学に協力的といい「まともに学校で勉強をしたことがなかったが、ここならちゃんと教えてくれる。小学生の子どもに勉強を教えられる母親になりたいし、起業もしたい」と笑顔で目標を語った。