【考えようPTA】参加者が増えた!ある小学校の改革「やりたい活動 選べます」
各学級に委員2人、重~い負担
吹上小では昨年度まで、各学級2人ずつの学級委員が、広報づくりや家庭教育セミナーの企画などのPTA活動を一手に引き受けてきた。1年間の負担は重く、敬遠される役だった。
新年度の学級委員を決めるのは4月。立候補する人はまれで、学級ごとに保護者による投票で決まるのが通例。引き受けられない場合は、学校に次点の人を教えてもらい、自分で交渉する仕組みだった。
実質的な強制ととらえる人もいたが、目立ったトラブルはなかった。しかし昨年度の学級委員を決める投票で、選ばれた保護者から就任を辞退した上、後任探しも「できない」という連絡があった。
PTA会長の下方丈司(しもかたたけし)さん(48)は「その保護者の気持ちも分かる。この制度は変える必要がある」と、問題意識を共有する他の役員と改革に着手。昨年7月、保護者に調査を行った。本部役員・学級委員を「ぜひやりたい」人はゼロだったが、一方で「活動に参加したくない」人は全体の3分の1の少数派だった。
やりたい活動、やりたい人に
役員会で検討し、「それならば会員が活動への関わり方を選べるようにしよう。『参加したくない』と答えた人は3分の1だから、残りは参加してくれる可能性のある人。やりたい人がいない活動は見直せばいい」と判断。昨年12月の意見交換会では不人気の「学級委員」を思い切って廃止する案に保護者の反対意見はなく、今年1月の臨時総会で活動ごとに参加者を募集する仕組みに変えた。
新年度を控えた今年2月、広報づくりやセミナー出席、給食試食会など18の活動を紙1枚にまとめて参加希望を募った。活動の見える化も奏功し、すべてに参加者の手が挙がった。
保護者の募集方式への反応は想像以上だった。5月の運動会の後片付けには75人が挙手。昨年度の20人を大きく上回った。
下方さんは、歴代役員がすでに活動のスリム化に取り組んでいた点も有利に働いたと指摘。「本年度の活動に参加した人の姿を見て、『やってもいいかな』と思う人が増えるよう、新年度に向けていい流れを作りたい」と話している。
PTA改革に立ちはだかる「3つの壁」
必要と感じても改革に踏み切れないPTAは多い。本紙に寄せられた読者の声からは、(1)会則変更の労力(2)前任らへの遠慮(3)声の上げにくさ-の3つの壁が浮かび上がる。
通常行事の運営だけで大変なのに、会則案を作り役員会と総会で了承を得るのは大きな負担。東京都の小学校の男性会長は「変える苦労をするより、動かず任期を終えようと考えがちだ」と明かす。
役職経験者の推挙で会長などになると、築いてきたものを変えることへの遠慮も働く。愛知県の小学校の女性会長は「歴代役員の助言が『前例踏襲』を求める重しとなる」と話す。「目立つ行動を取って保護者間で浮きたくない」という心理も壁となる。
仕事や家庭事情などで積極的に参加できない人は声を上げにくい。ある保護者は「献身的に活動している人ほど『内情を知らないくせに負担減だけ主張する』と批判する。そういう人とやり合って変えていく時間と心の余裕がない」と話す。