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【ニュースがわかるAtoZ】PTAは曲がり角 改革の動きが続々!

(2017年9月25日付 東京新聞朝刊)

 PTAってズレてない?-。共働き世帯が増えて家族の時間が減ったのに、変わらない活動量。役員に選ばれると、過剰な負担を強いられる。一方で、「子どものために必要」と活動に肯定的な意見も根強い。制度疲労を起こしたPTAをめぐり意見が割れる中、「持続可能な組織にしよう」と現場から改革の動きも出始めた。

【歴史と現状】女性の社会進出が進み、担い手が不足

 PTAはParent-Teacher Associationの略で、和訳すると「保護者と教職員の会」。全国で1000万人を超える人が関わる国内最大の社会教育関係団体だ。

 学校ごとの組織は「単位PTA」と呼ばれ、市や区ごとにつくるのが「○○市PTA連絡協議会(連合会)」。「P連(P協)」などと略される。さらに都道府県単位の組織、全国組織として日本PTA全国協議会(日P)がある。

図解 PTA組織図

 ただP連などに加盟していない場合もあり、「単位PTAの正確な数は分からない」(日P)。似たような組織に「保護者の会」などもあるが、PTAと実質同じだったり、共存したりと実態はまちまちだ。

 PTAは19世紀末に米国で生まれた。日本では1947年、「父母と先生の会」として始まった。日本の教育の民主化を進めた連合国軍総司令部(GHQ)が主導。翌48年には全国の学校の7割に普及した。

 児童生徒の健全な発達などを目的に活動。60年代には学校給食の充実を後押しするなど、子どもの教育環境を向上させた。校内暴力など「荒れる学校」が社会問題となった80年代には、学校環境の健全化にも一役買った。現在も、保護者を代表して学校に意見したり、祭りへの参加などで地域づくりに貢献したり、一定の役割を果たしているとの評価もある。

 発足当初からしばらく、担い手の中心は専業主婦と自営業の男性だった。しかし86年の男女雇用機会均等法の施行などで、女性の社会進出が進展。各地のPTAで担い手不足が大きな問題として浮上した。

 21世紀に入り、その傾向は一層顕著に。共働きを中心にPTA活動を重荷に感じるようになった。そもそも「PTA活動に充てる時間があるなら一家だんらんに充てたい」と考える家庭も増え、PTA活動そのものの是非が問われている。

【3つの課題】重い負担…そもそも必要なの?

 曲がり角を迎えたPTA。抱える課題は大別すると3つ。活動の負担、任意加入が周知・実現されているか、そして「そもそもPTAは必要なのか」だ。

 PTAの活動量は多い。主催行事に加え、学校や地域の行事にも参加。準備にも時間がとられる。本部や各学級の役員の重い負担が嫌われ、年度替わりの役員決めは難航する。沈黙が続く「地獄の保護者会」もある。くじ引きで役員になった人がPTAのために仕事を減らし、不満を胸に抱え続けるケースも少なくない。役員になれば業務に追われ、イベントで自分の子どもと触れ合えないことも。「子どものための活動なのに本末転倒だ」と訴える声も強い。

 PTA加入は任意なのに、強制だと思っている人は少なくない。説明が徹底されず、自動加入の形をとっている学校も多いからだ。加入は任意と知っていても、「自分の子が不利益をこうむる」「周りから浮きたくない」との懸念から、仕方なく加入する家庭もある。

図解 PTAをめぐる賛否両論

(デザイン:白井裕子)

 ただ価値観の多様化が進み、家族の在り方や土日の過ごし方も多様になってきた。その流れで「学校行事だけで十分」「共働きなので、子どもとゆっくり触れ合える土日は家族だけで過ごしたい」とPTA廃止を訴える声まで出始めた。

 「PTAという国家装置」(青弓社)の著者でヘルシンキ大学非常勤教授の岩竹美加子さんは「会員間、地域などさまざまな方向からの同調圧力があり、会員は非加入という選択がしにくい構造がある。今のPTAは会員のための組織ではなく、組織のための会員になってしまっている」と指摘する。

 また「負担を減らす最もシンプルな方法は、その在り方に風穴をあけること。したくないこと、意味の分からないことはしない、嫌なことは嫌と言う、規定の役職を埋めなければならないと思わないことだ。この積み重ねが組織解消も恐れない改革に向かう」と改革の必要性を訴える。

【これからは】増える「任意」の明示、柔軟な運営へ

 制度が時代とズレているのでは-。ここ10年ほど、こんな視点から議論が始まり、中には改革に動きだした学校もある。

 改革の主な焦点は2つで、1つ目は加入問題。多くの学校で「説明なしに自動的に全員加入」という形がとられてきたが、2010年に文部科学省が各都道府県教育委員会に出したある通知によって潮目が変わった。

 文科相が表彰する「優良PTA」の条件を、「任意加入の団体であることを前提に組織運営や活動内容の工夫をしている団体」としたからだ。

 この通知以降、「任意加入」を明示する学校も増加。東京都小学校PTA協議会が実施した調査によると、回答した学校の62%が加入が任意であることを説明し、46%が加入の意思確認もした。

 非加入家庭の子を差別しない旨を明示するPTAも出てきた。関東地方のある小学校のPTAは「会員でない保護者やそのお子さんに異なった待遇をしません」と宣言した。

 2つ目は、活動の負担だ。東京都大田区立嶺町小は15年度からボランティア制を導入。「できるときに、できることを、できる人がやる」仕組みに移行し、人が集まらないときは再募集したり、規模を縮小したりして柔軟に運営している。

 PTAに詳しい文化学園大の加藤薫教授(日本文化論)は「かつてはPTAに関わりたくない保護者からの改革論が中心だったが、ここ数年は市のPTA連合会の中心的人物や各校の会長を務めた人などPTAの中核からも変革を求める声が大きくなってきている」と変化を指摘する。「PTAの在り方も大きな転換点を迎えている。おそらくこれからの数年でかなり大きく変わっていくだろう」とみている。