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PTAはいらない!振り回される母親たち

  (2018年7月8日付 東京新聞朝刊)

書評『PTA不要論』黒川祥子 著

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黒川祥子著『PTA不要論』(新潮社・799円)

PTA役員を7回経験した著者が「もやもや」の正体に向き合う

[評者]加藤薫(文化学園大教授)

 2人のお子さんの在学期に都合7回、PTA役員を経験している著者が、現役時代のPTAに対する違和感、「もやもや」の正体に向き合って書かれた一冊。本書は次の言葉で結ばれている。
 
 「子どもたちが喜ぶこと、子どもたちのためになることを、教員と協力して気持ちよく行っていく。そんなシンプルな地点に、今こそ立ち戻る時なのかもしれない」
 
 著者は子どものために活動すること自体を否定しているのではない。では、なぜ「PTA不要論」なのか。一言で言えば「何のためなのか、わからない」仕事の押し付けが横行しているからだ。
 
 近年、組織運営のスリム化や活性化によりPTA問題を解決しようとする流れがある。しかし、著者は否定的だ。PTAは学校の「お手伝いさん」や地域との「懸け橋」のような便利な存在として学校などに利用されているため、自由意思に基づく活動は構造的に成り立ちにくいというのである。
 
 著者が特に問題とするのが「家庭・学校・地域の三者が一体となっての子育て」という国家・行政によるスローガンに、母親たちが振り回されてきた点だ。
 
 そもそも「地域」とは何なのか。一体化するとは具体的に何をすることで、どのような効用があるのか。この行政主導の「三位一体」の思想は、PTA問題の根源として「慎重な腑(ふ)分けが必要」だとする。著者の問題提起に深く共感する。教育行政関係者は真摯(しんし)に耳を傾けてほしいと思う。
 
 もっとも、PTA問題は私の知る限りでは、日本に特有の問題である。そうした点も加味するなら、一体化への志向、絆を重視する精神は、国家・行政がPTAに対して一方的に押し付けてきたものというより、日本の文化・社会に深く根付いているものといえよう。PTA問題解決のためには、一方で国家・行政の責任を問いつつ、もう一方で、私たち自身のあり方(=日本の文化)を省みる姿勢が必要かもしれない。

著者略歴

ノンフィクション作家。著書『県立!再チャレンジ高校』など。 

もう1冊読むなら

岩竹美加子著『PTAという国家装置』(青弓社)