イチロー先生が語る試行錯誤の大切さ 「遠回りすることでしか、本当の自分は見えてこない」〈アディショナルタイム〉
「無理をしてでも、友達の輪に入るべきですか?」
撮影が行われたのは今年の1月。小学校の教室を模したセットで5時間かけて、撮影に臨んだそうです。1限目は「こどもクラス」、2限目は「おとなクラス」、最後は「給食」。生徒たちからは、「どうして、子どもは早く寝ないといけないの?」「お母さんにお年玉を取られないようにするには、どうしたらいいですか?」「宿題がある意味って何ですか?」などなど、素朴な質問が続出。イチロー先生はその都度、うなずきながら、真剣な表情を浮かべながら、回答をしていました。
「無理をしてでも、友達の輪に入るべきですか?」という質問がありました。この男の子はクラスメートとなじめず、悩んでいるそうです。イチロー先生は「無理をする必要はないけど」と前置きしながら、「一度入ってみて、見極めるのもいいのかもしれない」と返答。「それで、学ぶこともあると思う。一度入ってみて、やっぱり違うなとか。入ってみるとこんな発見もあるなとか。体験してみるのはすごく大事なこと。完全に閉ざすことを最初にしてはダメ」と話しかけました。
「将来の夢が決まらないまま進路を決めても?」
こんな質問もありました。
「将来の夢が決まっていないまま、進路を決めてもいいですか?」。中学受験に挑戦しようとしている女子小学生からの質問でした。
イチローさんは「僕の場合は野球選手になるという大きな目標があったので、迷うことはなかった」と語り始めると、「自分の夢が見えていないときというのは、どこかで一生懸命取り組んでいれば見えてくる。今、迷っている状態とか見つかっていない状態というのは、実はいい状態ではないのかな」と、夢や目標を自分で考えることが大事だと生徒に説明。「(それは)いろいろな体験をすることでしか見えてこない気がする」と締めくくりました。
この話を聞いて、思い出したことがあります。昨年3月に引退会見を行ったイチローさん。自らの野球人生を振り返り、「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」「後退しかない時期もある」「間違ったことを続けてしまっていることもある。でも、そうやって遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない気がする」と話していました。
「打撃を極めた」イメージの裏で、試し続けた
イチローさんといえば、精密機械のようなバットコントロールで、数多くのヒットを記録しました。一つの打撃を極めていたイメージがありますが、そうではないようです。私は日本にいたときに取材したことがありますが、ずっと同じように打っていたわけではありません。打席での立ち位置やバットの構えなど、打撃フォームを毎年、細かく変えていたのが印象的でした。試すことが重要で、そのときはヒットにならなくても、納得しているように見えました。
イチローさんが子どもたちに伝えたかったのは、同じことの繰り返しに満足せず、いろいろなことを試してみてほしいということだったのではないでしょうか。回り道や試行錯誤が自分を作るというのは、世界を経験した大打者ならではの金言だと思います。
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