逆境から立ち直る力「レジリエンス」を育む親の声かけ つらいときは「悲しかったね」と共感を
心の病の予防「レジリエンス教育」に注目
足立さんによると、レジリエンスは「回復力、適応力」などを意味する英語。心理学的には、人生において逆境や困難に遭ったとき、その状況に耐え、そこから回復する力を指す。うつ病などの発症時期が低年齢化する中、レジリエンス教育は、欧米を中心に心の病の予防教育として研究が進んでいるという。
日本では不登校や若者の自殺の増加などを背景に、数年前から注目され始めた。海外の大学院で学んだ足立さんは、レジリエンスの教育プログラム開発や講師活動に取り組む。「これからの時代を生き抜くには学力だけでなく、たくましく生き抜く力が必要と思う親が増えている」。4月には家庭向けのノウハウを紹介した著書「子どもの心を強くする すごい声かけ」(主婦の友社)を出版した。
ネガティブ感情から「自己肯定感」が育つ
人の気持ちには、喜びや安らぎなどの「ポジティブ感情」と、不安や怒り、悲しみなどの「ネガティブ感情」がある。足立さんは「ネガティブ感情を抱く経験こそ、レジリエンスを育てるチャンス」と話す。
そもそもネガティブ感情は、誰でも自分の命を守るため、本能的に生まれるものという。例えば、怒りは自分の大切なものが侵害されたサインで、落ち込みは体を休めて心身を守る必要があるというサイン。重要な役割だからこそ、頭に残りやすい特徴がある半面、ネガティブ感情の沼から抜け出せず、心身に悪影響を及ぼすこともある。
「大事なことは、ネガティブ感情を感じる子どもの姿をありのままに受け止めること」と足立さん。どんな感情も大切だと思える子どもは「自己肯定感」が育つ。必要に応じて、大人がネガティブ感情の沼から抜け出す手助けをすることで、子ども自身が自分で気持ちを立て直す力を育てていけるという。
気持ちを否定・非難せず、言語化や共感を
手助けとしては、親の適切な声かけが効果的。例えば、「友達から嫌なことを言われた」と、子どもが泣きながら帰宅した場合、ネガティブ感情を味わわせないために、つい「そんなふうに考えるのはおかしいよ」と無理に気持ちを変えさせようとする親もいる。子どもが試合や受験で失敗して落ち込んでいるときも、前向きになってほしいとの思いで、「くよくよしないの」とネガティブ感情を否定。時には「努力が足りなかったんじゃないの」「だから言ったでしょ」と責めてしまうこともある。
こうした否定や非難などの声かけは、子どもが自分に対して批判的になり、自己肯定感を育てない。レジリエンス教育では、「悲しかったね」「悔しいね」と子どもの気持ちを言葉にしたり、共感したりすることを勧める。子どもは気持ちを理解してもらうだけで心が楽になり、ネガティブ感情と向き合う力を養っていく。「転ばないよう先回りして手助けする親もいるが、子どもが失敗や葛藤、つらい経験を生かせるようにする視点も大事です」
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