教育格差がコロナ禍で拡大 低収入の世帯ほど勉強時間が減少、高収入の世帯はオンライン授業も充実
昨年の臨時休校の影響を調査
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)と日本財団は、新型コロナウイルス禍による昨年の臨時休校などが子どもに及ぼした影響を調べた。元々あった勉強時間などの格差が拡大しており、年収の低い世帯やひとり親世帯など厳しい状況にある子どもへの支援の必要性を指摘している。
高収入世帯は塾や家庭教師などでカバー
コロナ禍による臨時休校で、子どもたちの1日の勉強時間は減少。世帯年収によってその減少幅に差が出たことが調査で浮かんだ。
感染拡大前の2020年1月と、休校が広がった同年5月の平日を比較すると、800万円以上の世帯では減少幅が66分だったのに、400万円以上800万円未満の世帯が84分、400万円未満の世帯は90分と、年収が低い世帯ほど減少幅が大きい。
MURCの小林庸平主任研究員は「休校時、年収の高い世帯は塾や家庭教師など学校外の勉強で減少分をカバーしたとみられる。学校再開後も高年収世帯の学校外の勉強時間は高止まりしており、格差拡大の傾向がうかがえる」と指摘する。
臨時休校で注目が高まったのが、オンライン授業だ。ただ、調査によれば、児童生徒と教員が「双方向」でやりとりできる形式だと勉強時間の維持に有効だったが、配信動画を見る「一方通行」では効果が薄かった。
通信環境や国立・私立の割合にも差が?
さらに浮かび上がったのは、「双方向形式」で受ける機会に世帯年収による差が生じたことだ。収入800万円以上の世帯の13.4%が「双方向形式」で提供されたと回答したのに対し、400万円以上800万円未満の世帯は6.3%、400万円未満の世帯は3.3%にとどまった。
小林さんは「年収の低い世帯は、自宅の通信環境などが十分に対応できていない可能性や、(公立と比べて双方向形式の提供割合が高い)国立や私立の学校に通っている割合が低い可能性がある」と指摘。「コロナ禍だけでなく平時でも災害などで休校を余儀なくされることもあり、双方向形式が可能な仕組みを整えることが必要だ」と話す。
スクリーンタイムはひとり親家庭で増加
コロナ禍は子どもの勉強以外の時間にも影響。テレビやゲーム、インターネット、携帯電話を使用する「スクリーンタイム」が、元々長い傾向があったひとり親世帯で休校中の増加幅が大きく、学校再開後も高い水準にとどまった。
小林さんは「スクリーンタイムの長さは成績と強い相関関係があり、じわじわと子どもに影響する懸念がある。厳しい状況にある子どもへの支援が重要だ。状況を丁寧にモニタリングし、必要な対策を講じる必要がある」と話す。
行事の縮小・中止で失われた教育機会も
コロナ禍は運動会や修学旅行など数々の行事の中止・縮小ももたらした。調査では、こうした出来事が特に小学生の「自分に自信を持てる」「難しいことでも前向きに取り組める」などの力に悪影響を及ぼしたことが分かった。
小林さんは「低年齢期の子どもにとって学校行事は自信を持ったり、前向きに取り組んだりする力を育むさまざまな機会を提供していたことがうかがえる。失われた機会を学校内外でカバーする努力が求められる」と指摘した。
調査概要
2021年3月、小学生から高校生までの子どもがいる世帯の親4000人を対象にインターネットで実施。休校の状況や1日の時間の使い方、生活習慣など37項目を聞き、6月に結果を公表した。
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