学校の1人1台タブレットでいじめ、都内6区市が確認 悪口やなりすまし 23区と5市のアンケートで判明
重大事態はなし 教員を通じて指導
東京都町田市立小学校の6年生女児=当時(12)=が昨年11月、いじめを苦に自殺した問題では、女児の両親がいじめに学習用タブレット端末が使われたと主張。パスワードが全員共通で、他の児童になりすましてチャットなどに書き込むのが容易な状態だった。
アンケートで、なりすましがあったと答えた4区市のうち、2区市では不快な書き込みをするなどのいじめもあった。
いじめがあったと回答した6区市とも、いじめ防止対策推進法上、心身に深刻な影響を与える「重大事態」に当たるような事案はなかったとしている。各区市は悪口の書き込みをした児童・生徒に対して、教員を通じて指導したという。
渋谷区は顔認証、品川区はSNS制限
なりすまし防止のため、文部科学省は、端末のアカウントやパスワード管理について学校が確認するべき項目を盛り込んだチェックリストを示している。これに基づき、各区市とも、端末の貸し借りを禁止したり、パスワードを他人に教えたりしないといった指導を行っているとした。
渋谷区ではパスワードの代わりに顔認証システムを採用。品川区ではチャットやSNSに利用制限をかけ、児童・生徒同士が直接メッセージをやりとりできないようにしている。葛飾区はアカウント、パスワードとも区が配布したものを使用し、児童・生徒が無許可で変更するのを禁じている。
「悪ふざけのエスカレートが怖い」 自治体は対応策を模索中
「ある児童になりすました不快な内容の書き込みや映像の投稿があった。いじめと判断した」
「特定の相手が嫌がるような言葉と手描きイラストを送信した児童がいた。教師がその場で注意した」
「オンライン授業のグループ討議で、自由意見として悪口が書き込まれた」
今回、アンケートに応じた東京都内の区市の教育委員会の回答によれば、いじめにつながるタブレット端末の使用には、さまざまな形態がある。いじめを認知した自治体は一部とはいえ、回答した28区市すべての公立小中学校で、児童・生徒全員に端末を配布済み。類似する事例が起きる可能性は否定できない。
回答したある自治体では夏休み中、自宅に端末を持ち帰らせたところ、複数の児童が互いにIDとパスワードを合意の上で共有、別人になりすましてふざけた内容を電子黒板に書き込む問題が起きた。このため2学期から持ち帰りを中止。学校で使う時にIDなどを書いた紙を個別に配り、授業後に回収している。
担当者は「リアルでもバーチャルでも『悪ふざけ』のエスカレートが怖い。新型コロナが再び拡大すると、自宅でのオンライン授業が必要になる。その際の対応策も模索している」と話した。
GIGAスクール構想とは
全国の小中学校で児童・生徒にパソコンやタブレットなどを配布し、学習に活用する政府の取り組み。データ収集、加工などがしやすいため、学びを深めることが期待されている。文科省によると、7月末時点で全国の公立小学校の96.1%、公立中学校は96.5%が全学年または一部学年で端末の利活用を開始済み。GIGAは「全ての人に世界への革新的な扉を」を意味する英文「Global and Innovation Gateway for All」の略。
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