跳び箱落下で下半身不随に 当時中2の男子生徒が横浜市を提訴 市側は争う姿勢
米田怜央 (2021年10月28日付 東京新聞朝刊)
横浜市鶴見区の市立中学校で2017年5月、授業中に跳び箱から落ちて下半身不随の障害を負った当時2年生の男子生徒(18)と両親が横浜市に対し、慰謝料など8300万円や将来働いて得られたはずの「逸失利益」、介護費用を含めた損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。27日に第1回口頭弁論があり、市側は請求の棄却を求め、争う姿勢を示した。提訴は6月22日付。
「事故につながる指導」で車いす生活
事故では、生徒が跳び箱の上で前転する技をした後に開脚跳びをした際、バランスを崩して頭からマットに落ちた。頸髄を損傷して下半身不随となり、手の指も動かせないという。現在は車いす生活で、特別支援学校に通っている。
訴状によると、生徒は跳び箱が苦手で、以前に台の横から落ちるなど失敗していた。担当教諭はこれを認識していたにもかかわらず、横浜市の指導要領が定める能力に応じた指導をしなかった。文部科学省の手引で「回転感覚が残って事故につながる」と示された順番になりうる指導をしたことも、注意義務に違反していると主張している。
市側は答弁書で「回転感覚が残っていたとは認められない」と反論した。2018年6月に市が公表した調査報告書では、事故原因を明示していない。
口頭弁論後に横浜市内で会見した生徒は「今後、大きな事故や同じ思いをする人が出ないためにも、市には責任をとってほしい」と訴えた。