中学校授業で生徒が本気になれる模擬投票 6政党が事前質問に回答 「将来選挙に行きたい」「政治に興味が湧いた」
前田朋子 (2021年10月31日付 東京新聞朝刊)
10月31日投開票の衆院選に合わせて、埼玉県上尾市立大石中学校で29日、生徒による模擬投票が行われた。主権者教育の一環で、事前に生徒から募った「聞きたいこと」を政党に質問し、回答を参考に投票。生徒らは「投票できるようになったらぜひ行きたい」と政治や選挙への関心を高めた様子だった。開票は11月1日を予定している。
社会科教諭が発案 約900人の生徒が質問
社会科の佐々木孝夫教諭(61)が発案した。「聞きたいこと」は今月上旬に全24学級の約900人にアンケートし、特に多かった10項目を選んだ。衆院選の争点にもなっているテーマばかりで、「なぜ知りたいか」の理由も付けて国政の6政党の本部に送付。25日までに全6党から回答が届いた。
生徒の関心が最も高かったのは新型コロナ関連で、「つぶれてしまったお店や経済を立て直してほしい」「友だちと早くカラオケやライブにも行きたいし、部活の大会や行事を増やしてほしい」などの理由が並んだ。また、2年生は沖縄の米軍基地問題、3年生は憲法9条改正など最近学習したテーマに興味を示し「賛成、反対の意見を聞いて、しっかり考えたい」などの意見があった。
各党の回答は選挙公約に沿ったもので「税金の集め方や使い道」「これからの学校教育」「憲法」などでは具体的な施策や方針を挙げた。一方、地球温暖化対策で原発に触れる党もあれば、触れない党も。同性婚や選択的夫婦別姓、米軍基地問題などでは説明の具体性に差もあった。
実際の政党の協力 「生徒の真剣度が違う」
生徒は回答をまとめた冊子を持ち帰って考え、内容を「◎○△×」で採点。27~29日の社会科の授業で政党名を書いて投票した。2年1組では29日、家族と話し合った様子や、良いと思った政策を発表。投票後は「政治に興味が湧いた」などの声が上がり、杉野玄起さん(14)は「政党が答えてくれてとてもうれしかった。納得のいく答えもあり、参考に投票した。将来選挙には行きたい」と話した。
佐々木さんは、今回は架空の設定ではなく、実際の政党の協力を得られたことで「生徒の真剣度が違う」と手応えを感じた様子。「自分たちの選択が大事だと知ることは大きかったと思う。このような授業が広がれば」と期待した。