お笑いで選挙に興味を 練馬区のローカル芸人ねりまだいこん。が小学校でネタ披露

西川正志 (2021年6月10日付 東京新聞朝刊)

児童の前でネタを披露するお笑い芸人「ねりまだいこん。」の影山直柔さん(左)と村野俊一さん=練馬区立春日小で

 低調な若者の投票率を向上させるため、活動を続けるお笑い芸人がいる。東京都練馬区を拠点に活動するコンビ「ねりまだいこん。」だ。練馬区の「選挙啓発大使」として区内の小中高校で選挙を絡めたネタを披露し、若者と政治の距離を縮めてきた。25日は都議選の告示日。ねりまだいこん。の2人は「住んでいる地域が良くなってほしいという思いはみんなあるはず。投票はその思いをかなえる第一歩」と、芸を通じて投票を呼び掛ける。 

選挙ネタのショートコントが大ウケ

 東京都選挙管理委員会は、各種選挙で年代別の推定投票率を公表している。それによると、2017年の前回都議選で投票率が最低だった年代は21~24歳の25.32%で、全体の投票率(51.28%)の約半分にとどまった。年齢層が上がるとともに投票率も高くなり、最高は70~74歳の74.30%。投票率向上には、若年層が選挙に関心を持つことが欠かせない。

 5月中旬、練馬区立春日小学校の6年生45人を対象に開かれた「選挙体験教室」。冒頭から練馬区の特産品、練馬大根の着ぐるみを着たボケの影山直柔(なおなり)さん(40)とツッコミの村野俊一さん(40)が登場し、子どもたちの関心をひきつける。

 「ショートコント、赤ちゃん」。選挙に関する言葉を覚えさせたい父親と、はっきり言葉が出ない赤ちゃんが掛け合うコントは6年生に大ウケした。

前回の都議選で練馬区選管から指名

 その後の選管職員による90分間の講義でも、2人が子どもたちにマイクを回したり、一緒に模擬投票をしたりと終始、笑いをちりばめた。参加した土屋晴日さん(12)は「無効票のことも笑いを交えて教えてくれた。雰囲気も明るくなって、楽しい授業でした」と心に残った様子だ。

 ねりまだいこん。が選挙に関わる活動を始めたのは前回の都議選がきっかけだった。当時、練馬区選挙管理委員会は若者の投票率を向上させるために区内の大学生と協力。学生から親しみやすい芸人に啓発活動をしてもらおうというアイデアが生まれた。

 影山さんらはもともと別のコンビ名で活動していたが、2011年ごろに番組の企画でねりまだいこん。に改名。それを機に練馬区のお祭りやイベントの仕事が殺到し、今では練馬区限定のローカル芸人として活躍する。区選管も「練馬に理解があり、長く活動してもらえる芸人を」と考え、ねりまだいこん。に白羽の矢が立った。

駅前に立ったら立候補者と勘違い!?

 2人は早速、学生とともに練馬駅前に立った。着ぐるみを着て「選挙啓発大使」と書かれたたすきをかけると、多くの人が足を止めてくれた。中には立候補者と勘違いする人もいたが、握手や写真撮影に応じ、「投票に行ってください」と訴えた。

 学校での体験教室もこれまでに30校ほどで実施した。ネタは各年代に合わせて工夫し、場を盛り上げ、生徒たちと選挙をつなぐ潤滑油の役割を果たしてきた。区選管の佐々木准一さん(38)は「若者にとって政治や選挙は重くて、とっつきにくい。私たちだけでは興味は持ってもらえないが、2人の笑いの力が若者をひきつけてくれる」と話す。

 間もなく始まる都議選。気になる若者の投票率の行方を、2人は「数年で成果が出るものではない。今子どもたちが投票権を得た時に僕たちを思い出して、投票所に足を運んでもらえたら」と冷静だ。一方、すでに有権者となった若者には「動かないと何も変わらない。自分の思いを投じてほしい」と呼び掛けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年6月10日

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