子育てとの両立難しい国会議員の仕事 与野党の若手女性議員に聞く現状と課題

(2021年1月25日付 東京新聞朝刊)
 政府は、政治家や管理職など指導的地位に占める女性の割合を「2020年までに少なくとも30%程度」とした目標を達成できず、昨年末に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」で「2020年代の可能な限り早期」に後退させた。国政選挙の女性候補者比率は「2025年までに35%」としたが、今秋までに行われる衆院選での実現は絶望的だ。現在、衆院議員の女性比率は9.9%で、昨年10月現在で世界190カ国中167位。米国のバイデン政権は閣僚の約半数が女性だが、菅内閣は2人にとどまる。与野党の若手女性議員に、日本政界の現状と課題を聞いた。

自民党・国光文乃衆院議員「ライフイベントとの両立、特に遅れている政治分野」

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政治分野での女性の参画状況などについて語る自民党の国光文乃衆院議員=東京・永田町の衆院第2議員会館で

-指導的地位の女性を30%にする目標は達成できなかった。

 「残念だ。政治分野は女性が子育てをしながら仕事ができる環境が整っていない。私の場合、子どもが小学生で、帰宅後に宿題を見ながら政治活動を続けるのは大変。未就学児はなおさら手がかかる。介護は男性も女性も悩む。ライフイベントと両立しやすい環境整備は政治分野が特に遅れていて、支援が必要だ」

-議員になる前の働き方は。

 「医師、厚生労働省と『ブラック職場』を渡り歩いてきた。夜7時の保育園のお迎えも年の半分以上は間に合わなかった。シッターなどあらゆる育児資源を使ったが、調整も大変。そんな苦労のない社会、ワークライフバランスを保てる社会にしたいというのが、政治家を志した原点の一つ」

-自身の事務所の働き方改革に取り組んだ。

 「今は個人事業主で社長的な立場で事務所の働き方をマネジメントできる。生産性を上げ、有権者が抱える課題にしっかり対応するのがモットー。残業を減らし、今は半分が女性だ」

-女性が議員になる難しさは感じたか。

 「厚労省で東日本大震災を経験し、政治に危機感を覚え、自民党の政治塾に通った。ただ子どもが幼く、議員になろうとまでは思えなかった。選挙区が空いて声がかかり、随分悩んだが、家族が理解してくれた。ただ、それはたまたま。選挙区が空かず、チャンスが少ないという壁はある」

国光文乃(くにみつ・あやの) 

1979年、山口県出身。東京医科歯科大大学院博士課程修了。厚労省などを経て2017年衆院選の茨城6区で初当選。自民党農林部会副部会長。


国民民主党・伊藤孝恵参院議員「24時間戦えなくても代弁者になれる」

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政治分野での女性の参画状況などについて語る国民民主党の伊藤孝恵参院議員=東京・永田町の参院議員会館で

-各分野で意思決定の場への女性参画が進まない。

 「指導的地位の女性30%に関して『20年代の可能な限り早期』としたのは問題の先送りだ。待機児童ゼロも先送り。会社員を20年間やっていた感覚からすると、遠くかけ離れた業務遂行能力だ」

-特に政治分野は遅れが著しい。

 「育児などと両立する女性議員が多いなか、各党とも当選した後のケアが足りない。両立できる環境整備が不十分だ。『そんなこと覚悟して議員になったんでしょ』という空気では声も上げられない。同じ志を持つ仲間を増やし、うねりを作って環境を整えたい」

-昨年9月の首相指名選挙で参院の一票を獲得し、国民民主党の代表選にも出馬して話題を呼んだ。

 「代表選は、無投票で終わりそうな状況を見て、一期目の議員の私でも挑戦できるという多様性や可能性を示す選挙にしたいと思った。決意表明では『育児中でも、24時間戦えなくても代弁者になれる』と訴えた。首相指名で受けた一票に恥じないように言いたいことを言おうと思った」

-代表選演説では「子ども子育てが政治の一丁目一番地でもいい」と訴えた。

 「肯定的な意見の倍以上、否定的な意見が寄せられた。出馬自体への誹謗(ひぼう)中傷も多かった。ただ、40年前の国会で『男性育休』の必要性を唱えた女性議員がいたように、その時に議論が進展しなくても常識は変わる。前例を作ることが大事だと思っている」

伊藤孝恵(いとう・たかえ) 

1975年、愛知県出身。金城学院大卒。テレビ大阪などを経て2016年参院選の愛知選挙区で初当選。国民民主党副代表。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年1月25日

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