<記者の視点>東京都の教員異動、なぜ3月に情報解禁しないのか 他県のように年度内に別れの機会を

(2022年4月15日付 東京新聞朝刊)

首都圏の教員異動情報を掲載した東京新聞の別刷り特集紙面

 「どうして東京都の教職員の異動情報の解禁は4月1日なのか。年度内に発表し、別れの機会を設けている県もあるのに」。都内の中学生と教員から本紙に届いた声を受け、首都圏の教育委員会に解禁日とその事情を取材し、3月22日の東京新聞朝刊と東京すくすくで報じた(教員異動は春休み前に教えて 東京は4月1日、埼玉は3月31日解禁 しっかりお別れができない)。

今川綾音記者

別れの言葉もないまま、会えなくなる

 「ギリギリまで差し替えがある」とする東京都と、3月31日解禁の埼玉県は、子どもたちと教員が別れの言葉を年度内に交わすのはほぼ不可能だ。一方、千葉・神奈川両県のように、年度内に余裕を持って発表したり、学校の裁量で伝えたりすることで、離任式など別れの機会を設ける地域もある。

 教員の異動発表を早めてほしい。都内で小中学生を育てる一保護者として、私も毎年強く感じてきた。中学生の娘は今年、慕っていた英語の先生の異動を知り、「4月に会えると思っていたのに」とショックを受けていた。親としても、時に叱り、時にほめながら、わが子と関わってくれた先生にお礼を伝え、きちんとあいさつをしたい。心残りのまま会えなくなった先生が過去に何人もいる。

生徒の心情に配慮 柔軟対応の都立高も

 記事の掲載後、ある都立高の教員は「発表は4月だが、生徒の心情への配慮から、前任校でも現任校でも離任式は3月の修了式と一緒にやってきた」と実情を伝えてくれた。実際に「3月下旬の修了式で、校長が異動する先生の名を発表してくれた」という都立高生もいた。都内にも柔軟に対応している学校があることを意外に感じ、都教委に問い合わせた。

 担当者は「ケース・バイ・ケースだが、あくまでもその時点では『本人内示』なので、あからさまに言ったり公表したりするのは適切ではない」と煮え切らない回答。前出の都立高教員は「子どもに感謝の気持ちを持たせるだけでなく、それを表現できる場をつくることは、教育的に価値のあることだ」と指摘する。「職場としての辞令交付と、子どもと向き合う教育活動は分けるべきだと思うので、全都で3月発表としてほしい」という、この教員の訴えに共感する人は多いだろう。

人とのつながりの大切さを教えるはずが

 今春の都の公立学校教員の異動総数は9200人。都教委によると、3月下旬までに異動の内示はほぼ終え、その後の差し替えは30人弱という。「間違った情報は提供できないので、発表の前倒しはできない」とするが、他県同様、差し替えの一部は新聞等での掲載に間に合わず、異動情報は完全な形では提供されていないのが実態だ。

 ある保護者は「異動してしまった先生と最後にお話ししたかったな、と子どもたちは毎年言っている」との声を寄せた。人とのつながりの大切さを教える学校で、異動前に教員との別れやお礼の言葉を交わす機会が保障されない現状は、本末転倒ではないか。異動がおおむね固まった時点で発表する。他県のように、都もそうした対応を取れないだろうか。(生活部)

コメント

  • 他の記事でも書いたが、人事異動の公表は2月中に済ませるべきだ。児童生徒だけではなく、教員の側でも良いことが沢山ある。 1.次年度の校内人事を早くに固められる。 2.3月中の仕事に早く手を付けられる
    教師のバント 男性 50代