おじいさんはごみを拾う?キジを励ます? 選んで学ぶSDGs デジタル絵本「えらぶっく」を無料公開
「ももたろう」など題材にメダル獲得
山へしば刈りに行ったおじいさんに「山にごみを捨てる人がいる」と訴えるキジ。「それは大変だ」とおじいさんが取った行動は?
「A ごみをひろってかえりました」
「B きじをはげましてかえりました」
昔話「ももたろう」を基にした一場面。読み手が好きな方を選ぶとページが進む。Aを選ぶと、SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」に対応する「りくのメダル」がもらえた。こうしてSDGsに関わりが深い方を選ぶとメダルを入手できる。物語は「さんびきのこぶた」と「アリとキリギリス」もあり、計17個のメダル獲得を目指す。
正解を押しつけず、双方向性を大切に
「正解を一方的に押しつけるのではなく、双方向性のある仕掛けを大切にしています」。えらぶっくを制作した「I&CO Tokyo」(東京都渋谷区)の小金丸彩子さん(37)は話す。
同社は、デザインやデータ技術を組み合わせ、企業の経営戦略などを支援している。えらぶっくは、こうした事業とは別に、「小さくても発明を」という社の取り組みの一環として開発し、今年4月に公開した。「私たちはSDGsや教育の専門家ではありませんが、事業で培った強みを生かし、今の社会にありそうでないものを創り出したいと考えました」
子どもが好きな「選ぶ」をきっかけに
工夫したことの一つが、17の目標を刻んだメダルの名前。例えば、目標2「飢餓をゼロに」は「ごはんのメダル」、目標12「つくる責任 つかう責任」は「ゴミのメダル」というふうに、小さな子どもが興味を持ちやすい言葉とイラストを用いた。「どこまで変えて表現していいか悩みながら議論を重ねました」
入手したメダルをタップすると、その目標の詳しい内容が読むことができる。
えらぶっくを使った子ども向けワークショップ=東京都内で(I&CO提供)
同社は、えらぶっくを子どもたちと一緒に読んだり、オリジナルの物語を考えて絵を描いたりするワークショップを都内の小学校などで開いてきた。「子どもたちは『選ぶ』のが大好き。親子の会話のきっかけにもなる手応えがあった」と小金丸さん。「子どもたちに未来を考え、つくるのは自分たちだと感じてもらえたら」と願っている。
ユニセフも子ども向けSDGs解説サイト
ユニセフが2年前に開設したサイト「SDGs CLUB」は、17の目標に基づき、具体的な数値目標などを示した169の「ターゲット」も、子どもたちが理解しやすい訳文で紹介している。
「飢餓をゼロに」のページでは、「世界を生徒40人の教室と考えると、その日食べるものがない、明日以降も食べ物をえられるか分からない状態の人が4人もいます」と現状について説明。「2030年までに、飢えをなくし、貧しい人も、幼い子どもも、だれもが一年中安全で栄養のある食料を、十分に手に入れられるようにする」などとターゲットを伝えている。
また、解決策を考えるヒントとなる資料や統計データも、動画やイラストなどで紹介している。
【追記】目標についてさらに詳しく知りたいという子どものために、「国連児童基金(ユニセフ)の解説サイト「SDGs CLUB」に移るボタンも設けた」と記していましたが、その後「えらぶっく」から「SDGs CLUB」へのリンクはなくなったため、その部分を削除しました。(2022年12月21日)