「多すぎる宿題」をやめたら大学合格実績が上がった 進学校・四日市高の「主体性を重視する指導」とは

白井春菜 (2022年12月15日付 中日新聞朝刊)

数学の授業で、なぜこう解くのか考えを話し合う生徒=三重県四日市市の四日市高校で

 「宿題が多すぎる」。そんな声が高校生から上がっている。特に数学は、短期的には反復練習が有効で、問題集もあるため宿題が大量になりがちだ。そんな中、進学校の三重県立四日市高校(四日市市)では4年前、数学の問題集など一部の宿題を提出させることをやめ、生徒の主体性を重視する指導に切り替えた。その効果は。 

提出が必須でないから予習ができる

 11月中旬、1年7組の数学の授業では「二次式の因数分解」を学んでいた。石川修也(のぶや)教諭(35)が「αβをなぜ積の形にするのか、隣の席の人と話し合って」と呼びかけた。すぐに近くの生徒同士で意見を交換。指名された生徒が「解の形が絞れるからです」と答えると、石川教諭はうなずき「公式を暗記して計算するだけが数学やないぞ。なぜこう解くのかを考える論理的思考が大事」と強調した。

 65分間の授業が終わっても「宿題は問題集のここからここまで」という指示はない。数学が苦手という浅井言(げん)さん(16)は「説明が丁寧な中学の授業と比べて演習がメイン」と当初は戸惑ったが「課題提出が必須じゃないので、必要な予習ができる」。数学が得意な前田明日香さん(16)は「自分で計画を立てて進められるのがいい」と話す。

以前は大量で、解答を写す生徒も…

 四日市高校は生徒が早期に学習習慣を身に付けられるよう、毎日の学習時間を記録させ、入学後6カ月間は課題提出を徹底して指導する。1年後期以降は、数学や国語の問題集、英単語の書き取りなど知識を問う内容や反復練習が必要な課題の提出は義務づけない。教員はその分、各教科のリポートや国語の論述問題などの添削に時間を割く。生徒は家で問題集を解いて分からない点があれば、質問に来るという。

 前任者から教育方針を引き継いだ諸岡伸校長(57)は「答えのない問いを立てて考える力が求められる時代。学習習慣が身に付いた後は自律的な学習が有効だ」と力説する。以前は特に数学で大量の宿題を課し、こなせない生徒が答えを書き写す例もあった。現在は生徒が教科ごとに自分の学習計画を提出し、どの教科をどれだけ勉強したかをタブレット端末で入力する。

HOWよりWHYで数学の力は伸びる

 国語の下條博之教諭(40)は「問題集を提出させないのは不安だが、授業中の反応や定期考査、学習時間などを注意深く見て、コミュニケーションもよく取るようになった」。進路指導主事の近藤健教諭(57)は「模試の成績は常に気にしている。今春の大学入試結果を見て効果を実感し、ホッとした」と話す。新しい指導で3年間学んだ今年3月の卒業生は、前年度よりも1クラス分人数が少なかったが、難関国立10大学の合格者数は20人増えた。

 2021年度に四日市高校で模範授業をするなど数学の授業改善を助言した名城大教職センター(名古屋市)の竹内英人教授(55)は「解き方は分かっていても基礎的な構造を理解していない生徒も多かった。納得していないものは使いこなせない。どう解くかというHOW型でなく、なぜこう解くのかというWHY型の思考が身に付けば入試で初見の問題にも対応できる」と指摘。「どの学校でもまずは宿題の量を7割に減らし、良質な問題を考えさせることで数学の力は伸びる」と提案する。

元記事:中日新聞 CHUNICHI Web 2022年12月15日

コメント

  • これは進学校だから成り立つのであって、普通かそれ以下の所では無理だと思います。単に学力の問題ではなく、思考の傾向で。多めに宿題を出すのも、きちんと意義はある。
    宿題減らすのって… --- --- 
  • すごいね!w
    酒 その他 70代以上