少子化の波、いよいよ東京にも 公立小の児童数が11年ぶり減少へ 進む学校統廃合

岡本太 (2023年1月1日付 東京新聞朝刊)

2025年度に統廃合される本町田小学校=東京都町田市で

 全国的な少子化に歯止めのかからない中、微増傾向だった東京都の公立小学校の児童数が2023年、減少に転じるとみられることが、都の推計で分かった。減少率は今後5年間で8%、10年間では18%に達する。都内の一部自治体は学校の統廃合を含めた検討に着手。東京都町田市は40年度までに市内の公立小42校を26校とする計画を策定した。

東京都の推計 今後10年で18%減

 都が毎年まとめている教育人口等推計によると、2025年5月時点で都内の公立小に通う児童数は、前年比約2000人減の59万8420人となる見通しで、マイナスとなれば11年ぶり。翌年以降は、さらに減少ペースが上がり、児童数は今年からの5年間で約4万8000人(22年比8%減)、10年間で11万2000人(同18%減)減る。

 東京の公立小児童数は、団塊ジュニア世代が小学生だった1970年代後半をピークに下がったが、2000年以降は微増傾向が続いてきた。日本全体の出生数が減る中、各地から東京に若い世代が転入することで児童数の減少を食い止めていたとみられる。

 ところが2016年以降、東京の出生数が減少。新型コロナウイルスの影響で2020年以降、その傾向が強まり、2023年以降に小学校に入学予定の子どもが減り続けている。地方で先行した少子化の影響が、いよいよ東京にも波及する。2027年の児童数は、東京23区でも19区で減少。うち7区は10%以上のマイナスと見込まれている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年1月1日

小学校数を減らす理由は少子化だけ? 町田市の公立小42校→40年度には26校へ

 2023年、東京の公立小学校に通う子どもの数が減り始める。そんな中、東京都町田市は、2040年度までに目指す市の姿として、市内の公立小を42校から26校に減らす計画を策定。首都・東京で、身近な地域の小学校がなくなる少子化社会の現実に衝撃が広がっている。 

統廃合で「もっと子育てをしづらくなる」

 「子どもの足なら30分はかかる。少子化が原因なのに、学校統廃合でもっと子育てをしづらくなるなんて」。この春、新1年生になる男の子の父親(47)がため息をついた。男の子の学区は、町田市の計画で、最も早い統廃合となった本町田小学校。新宿駅まで約30分の小田急線町田駅に程近い住宅街にある。

 計画によると2年後、約1.5キロ離れた本町田東小学校と統合。さらに3年後、東小跡地に建つ新校舎へと移転する。男の子が小学6年生の時だ。通学距離は当初の1キロから2.5キロへと延びる。

 町田市が昨年策定した計画では、統廃合は25年度の本町田小を皮切りに急ピッチで進む。2040年度までに市内の公立小42校のうち37校を、隣接する2~3校単位で統廃合。通学距離が3キロ近くなるケースもあり、市はスクールバスの運行などを検討する。

いじめなどの対応、建て替え費用も考慮

 市の試算では、市内の児童数は現在の約2万1000人から、2040年度には約1万5000人に減る。統廃合の理由について、市は、児童が減って1学年のクラス数が少なくなれば、いじめなどが起きたときでもクラス替えができず、多様な考えに触れる機会が失われてしまうなどとしている。

 「少子化という現実の中で、将来の子どもたちにとってよりよい教育環境をどう整えるか。それを考えた時、統廃合しかなかった」。市の担当者は、議論をこう振り返る。「子どもの数が減ってから慌てて統廃合を進めたくなかった。賛否はあると思うが、住民に長期的なビジョンを示すことも行政の責務だ」

 市の小学校は、多くが1970年代に建てられ、老朽化。中学校も含めてのすべての校舎を建て替えるためには2588億円かかる点も、統廃合の大きな後押しとなった。

専門家「身近に学校がある意義大きい」

 ただ実際に小学校の統廃合となれば、子どもの通学距離や時間がこれまでより延びるほか、地域コミュニティーや防災の拠点がなくなりかねず、反対も少なくない。学校で子どもたちと交流する高齢者からは「小学校が遠くなればとてもいけない」との声も上がる。

 町田市が、小学校の適正規模の下限について、法令の定める「12学級」(1学年2クラス)よりも厳しい「18学級」(同3クラス)としていることについても、「統廃合に前のめりだ」との批判が出ている。

 学校の統廃合問題に詳しい和光大現代人間学部の山本由美教授は「町田市の議論は小規模校のデメリットばかり強調しており、建て替え費用を抑えるための統廃合といわれても仕方がない」と指摘。「外の世界とのつながりを認識し始める小学生にとっては、身近な地域に学校があることのほうが意義は大きい。少人数学級の推進などで、学校を残す方法を検討すべきだ」と話す。

5区5市で38件の小学校統廃合を検討

 東京都で小学校統廃合の検討を進めるのは、町田市だけではない。統廃合や廃校の予定について、本紙で都内23区と26市に聞いたところ、具体的な学校名を挙げて検討しているものだけで5区5市の計38件にのぼった。具体的に議論していなくても「検討課題」とした区市も多く、広い地域で統廃合の議論が進む可能性がある。

 23区では江戸川区がこの春、小学校1校を閉校とし、別の4校を2校に統廃合する。いずれも児童減少が理由。中野区では来年春、小学校2校を統合する。

 26市では、八王子市や東大和市などが小学校の再編を予定。小平市は今後40年間で、現在19校ある小学校を14校に減らす計画を示している。

 一方、中央区や文京区などは都の推計でも今後5年間は児童数が増える見通し。担当者は「まだ子どもの数が増えていて、むしろ教室の確保が課題だ」と話し、地域ごとの偏りがある。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年1月1日