「車いすの人が悪いのかな、車いすで生活しにくい環境の方が悪いのかな」 障害と社会を考える発見型学習「DET」とは
障害平等研修 知識よりも気づきを
DETは世界39カ国で実施されており、2021年の東京五輪・パラリンピック大会ではボランティア約8万人の研修に採用された。当事者の障害者が講師役となり、参加者と対話することで、知識よりも「気づき」を促す。
この日は、車いすや白杖(はくじょう)、補聴器を着けた県内外の4人が小学校を訪れ、講師役を務めた。メーンの進行役は、2歳で聴力を失った戸田市議の佐藤太信(たかのぶ)さん(42)。体育館で車いすの人のイラストを見せながら「車いすの人が悪いのかな、車いすで生活しにくい環境の方が悪いのかな。それを考えてください」と呼びかけると、子どもたちは興味津々に聞き入った。
「当事者の声を聞く必要性」を話したのは、車いすユーザーの講師で、さいたま市の大野裕子さん(43)。あるとき、車を運転して障害者用駐車場に止めたところ、車いすが降ろせなかった体験を披露。「ちょうど降りる場所に障害物が設置されていた。実際使う人の意見を聞いて建物を造ることが大事」と語りかけた。
「障害は人ではなく、社会にある」
短い映像を見て「何が問題なのか」を考え、気付いたことを発表する学習もあった。数人ずつの班に分かれた子どもたちは「はい!」とこぞって手を挙げた。そのうち一つは「筆談で会話しようとした聴覚障害者に、受付の職員が『聞こえる人と来て』と言って追い返す」という映像。武藤陸斗君(10)は、「そのまま筆談で話を続けたらよかったと思う」と感想を話した。
授業を終えた原口茉緒さん(10)は「知らないことを知ることができて、とても楽しかった」と笑顔に。田中舜平君(10)は「障害がある人はかわいそうじゃない。その人にしか分からない自由な世界があると思った」と真剣な表情を見せた。講師役の4人は「授業の最後で、子どもたちが『障害は人ではなく、社会にあると分かった』と発表していた。一番大事なことが伝わった」と喜んでいた。
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