小学校の卒業式の朝 長男は僕から少し離れて歩いた〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
「ぼく小学校で友だちできるかな?」。6年前の入学式の朝。不安そうな長男はそう言って、うつむいて歩いていた。
「パパやったら、かんちゃんと友だちになりたいわ」と言うと、「どきどきしてきた」と笑い、手をつないで小学校まで歩いた。
先日の卒業式の朝。身長171センチ、体重80キロになった長男は、時折「この服苦しいわ」と中学で制服がわりに着ることになっているユニクロで買ったスーツの文句をぶつぶつ言いながら、僕から少し離れて歩いていた。
長男の6年を僕的に思い返してみる。
教室の机で目の上を切って3針縫った。ランドセルにヤゴとカエルを入れ、教科書をびしょびしょにして帰ってきた。
先生に怒られて学校に行きたくないと言い出し、無理やり連れて行くと校門の前で吐いた。あきらめて帰り道にジュースを買ってあげたらすぐ元気になった。コロナで休校の時は、毎日近くの川に釣りに行っていた。
恥ずかしがって学校でトイレに行かないので、いつも走って帰ってきてトイレに駆け込んだ。間に合わず、廊下にうんちが落ちていたこともあった。「庭にした」こともあった。エトセトラ エトセトラ。
「入学式」の看板があったのと同じ場所に立つ「卒業式」の看板の前で写真を撮った。「3枚ね」と撮る枚数を指定してきた長男は、3枚撮り終わるとすぐに友だちのところに走って行った。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。12歳、10歳、5歳、2歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。