夏は涼しく冬は暖かい教室に 市民が改修「断熱ワークショップ」 エアコンの効果向上、快適に省エネ
内窓や断熱材で、冬は7度も暖かく
開校40年余りの神奈川県藤沢市立小糸小学校。鉄筋コンクリート4階建て校舎の最上階にある多目的室で今年3月、市民有志の実行委員会による断熱ワークショップがあった。親子8組が地元の建設会社の指導の下、南側の窓にアクリル製の内窓を取り付けたり、天井や壁の裏に断熱材を張ったりする作業を体験した。
参加した同校5年の野島彩羽さん(10)は「冬は暖房がついていても部屋全体が冷や冷やしたけど、ポカポカになった。全然違う」と効果を実感。実行委がワークショップ後に測定したところ、同室の窓の表面温度は他教室より最大で7度高かった。
実行委は、材料費など約118万円をクラウドファンディングで集め、藤沢市と共同でワークショップを開いた。環境保全などに取り組むNPO法人のスタッフで実行委代表の藤法淑子さん(36)は「断熱対策の大切さを多くの人に知ってほしい」と話す。
最上階は屋上から熱が伝わりやすい
「夏の教室が暑すぎる」と、保護者らが昨年8月に同様のワークショップを開いたのは、さいたま市立芝川小学校。築約50年の4階建て校舎の最上階にある4年1組の教室は、日射を受けた屋上の熱が天井から伝わる構造で、冷房をつけていても室温は30度を超えていた。
建築関係者らでつくる「さいたま断熱改修会議」や学校、PTAなどが協力し、天井や壁に断熱材を入れ、日差しが強い東側の窓に遮熱パネルを設置。夏の冷房時は他教室より室温が6~8度低くなり、児童から「勉強に集中できるようになった」との声も。同会議の佐竹隆一事務局長(73)は「教室へのエアコン設置が進んでいるが、先に断熱対策を考えるべきだ」と訴える。
2019年に岡山でスタート、全国へ
建物の断熱に詳しい建築家で東北芸術工科大教授の竹内昌義さん(60)によると、学校での断熱ワークショップは2019年夏に岡山県津山市の小学校で始まり、翌年秋に長野県白馬高校でも開かれた。
その後は、埼玉、神奈川、宮城、鳥取、島根、千葉などで同様の取り組みが進む。竹内さんは「子どもたちが断熱の効果を知り、各家庭で対策を施すことにつながってほしい」と期待する。
電気代が高騰 断熱対策の底上げを
文部科学省によると、公立学校の普通教室のエアコン(冷房)設置率は昨年9月時点で96%。ただ、建物自体の断熱対策がなく、熱が漏れやすい状態になっている例が多いとみられる。竹内さんは「公立学校は昔ながらの窓を開けて風を通す構造が多く、『夏は暑く、冬は寒い』が当たり前と考えられてきた。天井や壁に断熱材が入っていない無断熱も多い」と指摘する。
竹内さんが仙台市の小学校で行った調査では、教室の断熱改修をすることで、冷暖房のエネルギー消費量を年間最大約35%削減できた。竹内さんは「電気代が高騰する中、断熱対策の底上げが求められている。全国一斉に学校の断熱改修を進めるべきだ」と話す。
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