手のひら冷却で熱中症予防 流水や保冷剤で全身クールダウン 体温調整する血管「AVA」に注目

(2022年7月29日付 東京新聞朝刊)
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休憩中に、特殊な保冷剤で手のひらを冷やすバレーボールチームの子どもたち(赤木貴雅さん提供)

 連日暑い日が続く中、熱中症予防に「手のひら冷却」が注目されている。手のひらには体温調整の役割を担う血管があり、手を流水で冷やしたり、水を入れた洗面器に手を入れたりするだけで、全身を冷やす効果が期待できるという。スポーツの現場にも広がっており、専門家は水分補給と合わせて、手のひら冷却を勧める。

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AVAが開通→手のひらから熱を逃がす

 「実は、こまめな手洗いはコロナだけでなく、熱中症予防にもつながる」。そう話すのは熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜さん(56)だ。

 谷口さんによると、手のひらには動脈と静脈をつなぐ動静脈吻合(ふんごう)(AVA=Arteriovenous Anastomoses)という体温調整を担う血管がある。通常は閉じているが、体温が上がるとAVAが開通して一度に多くの血液を流し、手のひらから熱を逃がす。

図解 体温を調整する血管AVA

 AVAを冷やすと冷えた血液が体内を巡り全身のクールダウンにつながるという。谷口さんは熱中症対策に、水分補給と手のひら冷却を勧める。

足の裏にもAVA 冷やし過ぎには注意

 「手のひらを15秒ほど流水で冷やすといい」と谷口さん。AVAは足の裏にもあり、洗面器やバケツに水を張り、5分ほど手や足を水につけるのもいい。

 ただ、冷やし過ぎは禁物。水温が冷た過ぎると、血管は収縮してしまう。「氷水などに手を長時間つけることは避けた方がいい。ひんやりして気持ちがいいと感じる15度程度が最適」だという。

スポーツに保冷剤「アイスバッテリー」

 手のひら冷却はスポーツの現場にも広がっている。2年前に設立された茨城県つくば市の小学生女子バレーボールチーム「VC二千翔(にちか)」。練習を行っている小学校の体育館にエアコンはない。閉め切った体育館を開けた直後の室温は40度近いことも。元バレーボール選手でつくば市スポーツ協会職員の監督・赤木貴雅さん(37)は「子どもたちを熱中症から守る方法を探していて、手のひら冷却を知った」という。

 VC二千翔は、手のひらを冷やすために「アイスバッテリー」という特殊な保冷剤を使っている。所属している子ども12人は1人1個ずつ、自宅で冷凍した保冷剤を持参。練習を始める前や休憩中にクーラーボックスから取り出して、手のひらや首などを冷やす。

 「15分に1回は休憩し、水分補給とセットで体を冷やすことを習慣づけている」と赤木さん。チームの小学6年生鈴木花歩さん(11)は「暑いときに手のひらを保冷剤で冷やすと体全体が冷たくなる感じがする。以前、保冷剤を使っていない子は練習中に暑さで気持ちが悪くなることがあったけれど、全員が保冷剤を使っている今はそうしたことはなくなった」と話す。

15度を2時間キープ 睡眠時も使える

 アイスバッテリーは、手のひらを効率的に冷やすことを目的に大阪のメーカー「松浦工業」が2019年に発売。冷凍庫で凍らせ取り出した直後の温度は零度以下だが、5分後には手のひら冷却に適した15度まで上昇。2時間ほど、15度の状態をキープする。

 スポーツ専門店などで2500円前後で売られており、2019年の販売数は300個だったが、2020、2021年の2年では合計4万個を売り上げた。同社の井戸英二さん(52)は「睡眠時の使用もお勧め」と語る。

 自転車ロードレースのプロチームスタッフの森川健一郎さん(53)=静岡市=も、今月からアイスバッテリーを使用。「手のひら冷却は、手軽で有効な熱中症対策」と実感している。

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