園バス置き去り防止へ、防止機器が続々開発 センサー検知型、警報解除型

海老名徳馬 (2023年3月31日付 東京新聞朝刊)
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置き去りを防止するシステム「LiDAS(ライダス)」を装備したバスの車内。白い部品がレーダー式センサー=京都市の仏教大付属幼稚園で

 幼稚園などへの通園バスに子どもが取り残される事故が相次いだのを受けて、置き去りを防ぐためのさまざまな機器が開発されている。昨年12月には国土交通省がその安全装置のガイドラインを公表。バスの安全な利用を目指した対策が急ピッチで進められている。 

車内のわずかな動きで人を検知

 バス後方に園児が1人乗ったまま、運転手役の大人がエンジンを切って離れると、バスから大きなブザー音が鳴り響いた-。

 2月に京都市の仏教大付属幼稚園であった、置き去りを検知するシステム「LiDAS(ライダス)」の実証実験。バスの天井に7つ取り付けられたレーダー式のセンサーは、ミリ波という電波を使い車内のわずかな動きで人を検知する。

 同園は導入の予定で、「子どもが急に体調が悪くなったりトイレに行きたがったりして、バスから降りて安全確認より先に対応に追われることはどこでもあると思う。万一のために機械があると安心感につながる」と村上真理子副園長。システムを販売する三洋貿易(東京)の担当者は「いすの下などに園児が隠れていても把握できる」と説明する。費用は約50万円から。3月初め、国交省にガイドラインへの適合確認を申請したという。

4月から安全装置設置を義務化

 昨年9月に静岡県牧之原市で3歳の女児が熱中症で死亡した事故などを受け、政府はバスへの置き去りを防ぐ安全装置の設置を今年4月から義務化、6月末までの設置を促す。全国の通園バス4万2000台が対象で、1台あたり17万5000円を上限に費用が補助される。

 ガイドラインでは、2種類の安全装置を想定している。一つは、ライダスのようにセンサーで車内の子どもを検知する方法。もう一つは運転手などが取り残された園児がいないかを確認した後に、車内後部のボタンを押して警報を解除する。

 いずれの方式にも、故障や電源を失った時の通知機能や、温度耐性(65度~マイナス30度)などを求める。ガイドライン策定のワーキンググループの委員だった自動車盗難防止装置メーカー加藤電機(愛知県半田市)社長の加藤学さん(57)は「子どもの命を守るために、二重三重に安全性を考慮した」と説明する。

 加藤さんによると、昨秋より前に売られていた置き去り防止機器の中に「ガイドラインに適合する品はおそらくなかった」。高い安全性を求めたこともあり、装置を開発した多くの企業が修正を迫られたという。

 加藤電機の置き去り防止装置「HORNET(ホーネット)」は、バス後部のボタンを押す仕組みと、車内の動きを検知する仕組みを併用。当初オプションだった故障検知の機能を全ての品に搭載するなどして対応し、適合できた。4月の生産分まで予約で埋まっているという。

出欠席やバス乗降記録と連動を

 内閣府が公開しているガイドラインに適合する装置は、30日時点で37製品。少しずつ増えている一方で、課題を指摘する声もある。子どものけが予防などに取り組むNPO法人「Safe Kids Japan」の太田由紀枝さん(63)は「設置が進む中で不具合などは出てくると思う。国は相談できる窓口を設けるべきだ」と提案する。

 将来的には新しい技術が導入される可能性も。東京都内で幼稚園などを運営する学校法人正和学園の理事長で、策定までの議論を知る齋藤祐善さん(49)は「情報通信技術(ICT)を利用した出欠席や登園バスへの乗降を記録するシステムはすでに多くの園で使われていて、置き去りを防ぐ装置との連動は必須だ。今回は時間がなかったが、安全性を高めるためにより高度化してほしい」と話す。

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