「生徒の裸画像」で中学校長逮捕 さかのぼって調査せず相談窓口も設けない練馬区教委に疑問
「被害があったら警察が捜査している」
11日夜、事件発覚を受けて開かれた記者会見には堀和夫教育長ら区教委幹部が出席。容疑者のデジタルカメラには複数の児童ポルノが疑われる画像が見つかっている点などを指摘されると、幹部は「(区教委として)さかのぼっての調査は考えていない」。過去の勤務先も「被害者の特定につながる」として明らかにしなかった。
校長は1992年に都教委に採用され、関わった生徒は膨大だ。被害が拡大した場合、勤務歴が明らかになれば、保護者ら周囲が気づいて声を上げるきっかけになるかもしれない。だが幹部は「公表すれば、誹謗(ひぼう)中傷などその学校の生徒、卒業生に影響が及ぶ。仮に被害があったとすれば、警察が捜査している」と主張した。
在籍校の生徒にアンケートはしない
さらに会見で納得できなかったのは「ほかに被害者がいても、警察が来るまで待てということか」との質問に「性暴力の各種窓口に相談してほしい。その中に区内の生徒がいれば、対応する」と答えたことだ。あくまで自主的な対応には消極的。容疑者が在籍していた中学校も、生徒へのアンケートで被害の有無を調査する予定はないという。
ジャニーズ事務所創業者の故ジャニー喜多川氏の性加害問題では、大半の被害者が長年声を上げられなかった。だからこそ、被害者には丁寧に寄り添う必要があるが、会見で感じたのは、徹底した「事なかれ主義」だった。
識者「ジャニーズ事務所と同じ意識」
専門家に聞いた。元中学校教員の金山健一・神戸親和大教授(学校心理学)は、過去数十年にさかのぼる調査は「難しいだろう」と指摘する一方、「この事件に限った相談窓口を設置し、LINEなど気軽に使えるツールで情報を得られる態勢をつくるべきでは」とした。
子どもへの性暴力に詳しい後藤弘子・千葉大大学院教授(刑事法)は「ジャニー喜多川氏の個人的問題にしようとしたジャニーズ事務所と同じで、区教委には自分たちが加害者だという意識がない。警察の捜査とは別に学校は被害者支援に徹する必要がある」と問題視。被害の拡大を見据えて支援窓口を設置し、長期にわたる支援計画を示すことが必要だと訴える。「まずは大人を信じてもらうこと。都教委と連携して、『あなたの味方』『つらかったら、いつでも相談してほしい』というメッセージを出してほしい」
とまどう保護者たち 過熱報道も心配
会見翌日の12日に開かれた保護者説明会の参加者十数人にも区の対応について尋ねた。「この学校でも被害者がいるかもしれない。区教委も調査してほしい」「過熱報道でこれ以上、混乱させないでほしい」などと賛否は分かれ、事件へのとまどいを感じた。
具体的に子どもへの性被害をどう防ぎ、被害者をどう守るのか-。社会全体で当事者意識を持って向き合わなければならない、と強く思った。
東京都練馬区立中学校長のわいせつ画像所持事件
勤務する中学校の校長室で、児童ポルノ画像が記録されたデジタルカメラを所持したとして、警視庁は10日、児童買春・ポルノ禁止法違反(単純所持)の疑いで、練馬区立三原台中学校の校長北村比左嘉(ひさよし)容疑者(55)を逮捕した。捜査1課によると、画像は過去の勤務先の生徒を撮影したものとみられる。カメラからほかにも児童ポルノが疑われる画像が見つかっており、調べを進めている。文部科学省によると、2021年度に性犯罪・性暴力、セクハラにより懲戒処分を受けた教職員は216人。過去5年間、毎年200人台の推移を続けている。
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