東京都の「高校無償化」に隣の川崎市民はもやもや 徒歩5分でも支援格差「果てしなく遠く感じる」
東京都の小池百合子知事が、来年度から、私立を含む全ての高校の授業料助成に設けている所得制限(世帯年収910万円未満)を撤廃する方針を示しました。対象は都内在住の世帯です。新たに支援対象となる家庭で歓迎の声が上がる一方、複雑な気持ちを抱く近隣自治体の保護者もいます。
都内の高校に通学 県の支援は対象外
多摩川を挟んで東京都の南隣にある神奈川県の川崎市。市内から都心の私立高校に長女(16)を通わせる男性会社員(50)は「家族から『東京都との境がすぐ近くにあるのに、なぜ住む場所をこっちにしちゃったのか』と責められました」と苦笑いします。
国の私立高校の就学支援金は、全国私学の平均授業料を勘案した額(年39万6000円)が上限で、年収590万円未満の世帯が対象です。都は独自の上乗せ制度で、国の就学支援金と合わせて年47万5000円を上限に助成しており、来年度から910万円未満の所得制限も撤廃する予定です。
神奈川県も年収700万未満の世帯まで年45万6000円を上限とするなど同様の独自支援制度があります。ただ、対象は県内在住かつ県内設置の私立高校に在学する場合なので、前出の男性の場合は対象外でした。
子どもの医療費も…「引っ越したい」
「都の制度は、都外の私立高校在学の場合も対象なのに残念」と男性。子どもの医療費助成の面でも都との支援格差を感じているといい、「今さらだが、手厚い支援を受けられるなら、都内への引っ越しも検討するかもしれない」とため息をつきました。
定例会見で質問を受けた川崎市の福田紀彦市長は「東京都の財政力と比較されては、もう全く太刀打ちできない。東京都と川崎市という基礎自治体を皆さん比べてしまうが、そのあたりを混同される懸念はすごくある」と、人口流出などの影響を心配しました。
とはいえ、前出の男性と同じく東京都との境まで徒歩5分の場所に住んでいるという子育て中の50代男性会社員も「(東京都は)物理的な距離以上に、果てしなく遠く感じる」。一部の保護者の間に、もやもやとした不公平感は続きそうです。
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