こころもからだも幸せに 食べ物の入口と出口って? 慶應義塾大学 中澤研究室と株式会社 LIXILの3eウェルビーイング健康情報教育の取り組みとは〈PR〉

疑似うんちをつくって、プライベートゾーンを清潔にするための習慣を科学的に学ぼう!

みなさんは「ウェルビーイング」って知っていますか?

身体的、精神的、社会的の全てにおいて幸福で満たされた状態をいいます。日本社会に根ざした子どもたちのウェルビーイング向上を目指して、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)環境情報学部の中澤仁教授の研究室では、IoT(モノのインターネット)技術や楽しい実験を取り入れた様々な「健康情報教育プログラム」の開発と研究に取り組んでいます。今回は、大学の研究者らが人間の「うんち」や生理のときに出る赤色の血である「経血」を擬似的に作って、食べ物の入口から出口までの體(からだ)の名称や仕組み、プライベートゾーンを清潔にするための習慣を伝える授業を行いました。

提供/慶應義塾大学環境情報学部 中澤研究室

環境情報学部 中澤研究室って、どんなところ?

環境情報学部は、SFC(神奈川県藤沢市)にあります。中澤研究室では、ヒトが行う様々な活動を円滑に支援するセンシング、AI(人工知能)、インタラクション(相互作用)技術、IoT技術を活用した研究や、健康情報教育プログラムの研究開発をしています。

プライベートゾーンを大切にしよう

子どもたちにこころもからだも幸せになってもらいたい。そんな思いで、中澤研究室では株式会社LIXILと共同し、3月に教材となる折り畳み式の絵本を作りました。「3e*ウェルビーイング健康情報教育プロジェクト」の一環で、大学生と高校生向けに開いたワークショップで出た意見が基になっています。「食べ物の入口と出口」と題して、カラフルなイラストも交えてわかりやすく伝えています。

*3e:SFC 中澤研究室主体に進めているevidence(裏付け)、education(教育)、entertainment(楽しみ)の3つのeの要素が揃う健康教育ツールのこと。

「食べ物の入口と出口」の絵本から。上の画像をクリックすると特設サイトが開きます。

人間のうんちやおしっこが1日にどのくらい出るかや、ゾウやウサギといった動物のうんちの量を示して「體(からだ)は食べ物でできている」と紹介します。

そして、今回は、プライベートゾーンのことを「食べ物や水分の入口と出口、通り道のこと。水着でかくれる場所と口だよ」と説明して、「みんなが大切にしたい場所はプライベートゾーン。とても大切な場所だから、口以外はほかの人に見せちゃいけないよ」と強調します。

さらに、「食べ物や水分の出口は、皮膚が薄い場所。やさしく扱うことが大切ですね」と、出口を傷つけないように清潔にする方法と習慣は「何か」を、解剖学および生理学を取り入れながら、疑似うんちなどを使った実験で、楽しく体験しながら学べるプログラムです。

絵本を見せてプライベートゾーンをやさしくキレイにすることの大切さを語る慶応大の本田由佳先生

折り畳み絵本では、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の一部も取り入れています。

制作統括を担当した慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授/博士(医学)で健康情報学者の本田由佳先生は「からだの名称や仕組みを幼いうちから知ることは重要。性暴力や性被害などの観点だけでなく、プライベートゾーンは命やからだ、子どもたちの未来の人生をつくる大事な場所であることを伝えたかった」と語ります。

国際セクシュアリティ教育ガイダンスとは

ユネスコが2009年に公表。学ぶテーマを

  1. 人間関係
  2. 価値観・人権・文化・セクシュアリティ
  3. ジェンダーの理解
  4. 暴力と安全確保
  5. 健康と幸福のためのスキル
  6. 人間のからだと発達
  7. セクシュアリティと性的行動
  8. 性と生殖に関する健康

と定めています。テーマごとに5~8歳、9~12歳、12~15歳、15~18歳以上のそれぞれの発達段階に応じた必要な知識と課題解決力を身につけることを掲げています。

「誰のからだも大切に」学ぶイベント

こうした絵本の知識を持ち、日常生活のスキルにつなげてもらうための小学生向け授業が2024年3月23日、東京都豊島区で開かれました。

中澤研究室と株式会社LIXIL(リクシル)が進める共同研究プロジェクト(*1)の一環として共催したイベントです。小学3~6年生の児童らは折り畳み絵本などで、食べ物がからだに取り込まれたり、うんちになったりする流れを学んだ上で、擬似うんちなどの汚れを落とす実験を行い、プライベートゾーンを健康的に、やさしく清潔にするための方法を習いました。

*1:中澤研究室と株式会社LIXIL(リクシル)は、2023年1月よりユネスコ国際セクシュアリティガイダンスに基づき、全ての子どもたちが、性と生殖の衛生意識・習慣を楽しく学ぶことができるSTEAM教育プログラム開発の研究をスタートしました。

からだの名称と仕組みを学ぶ解剖学図鑑で楽しむ参加者

この日のイベントは2回行われ、1回目は7組の親子が参加しました。講師は本田先生と、サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太さん扮(ふん)する、エイト特派員。YouTube科学番組「らぶラボきゅ~」の登場人物で、惑星Qに住んでいるQ星人(宇宙人)です。

本田由佳先生と地球の科学を学ぶためにやってきたエイト特派員

授業は、本田先生とエイト特派員の掛け合いで進みます。子どもたちはまずからだの仕組みを学びます。エイト特派員が「みなさん、かけっこやマラソンをしたことがありますか? 今日はマラソンに例えてからだの仕組みを学びたいと思います。まず、人が立ったり運動したり身を守ったりするために必要なパーツはなんですか?」と問いかけます。

「食べ物の入口と出口」の絵本から。上の画像をクリックすると特設サイトが開きます。

骨を豊かにする それが體(からだ)

本田先生が「みんなわかるかな。骨です。骨にはいろんな種類がありますが、頭を触ってみてください。頭蓋骨は頭を守っています」と説明しました。続いて、体の旧字である「體」を示し、その文字に込められた意味を解説します。「骨を豊かにするというのは大事なことです。目には見えないけれどもみなさんの體(からだ)には骨があります。今日は、骨の中にある食べ物の入口と出口と通り道の部分のお話をしたいと思います」

「骨を豊かにするのはとても大事なこと」と説明する本田由佳先生

エイト特派員は「みなさんにクイズを出したいと思います。みなさん、食べ物の入口から出口までの長さは何メートルぐらいあるでしょうか?」。突然の質問に子どもたちは即答できません。エイト特派員はヒントを出します。「大人の身長は1メートル70センチとか60センチぐらいです」。子どもたちはイメージしやすくなり、「3.1メートル?」などと答えました。

食べ物マラソン 9mを1、2日で通過

答えは本田先生がおなかに抱えていたモールにありました。エイト特派員がそのモールを引っ張って会場の端まで動きます。その長さは9メートル。食べ物はこの道のりを24~48時間、1日から2日かけて通って行きます。

モールの長さで食べ物の道のりを表現するエイト特派員(左)

本田先生は「食べ物は、パンやご飯などの主食、肉、卵、魚、大豆などのタンパク質、野菜などバランス良く、よくかんで、5つの味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)をよく味わって食べることが重要です」と味覚教育体操の紹介や食事のとりかたもアドバイス。その結果出る排せつ物は、小学3年生ですと、うんちは1日に100〜200グラム(*2)、小さなバナナぐらい。おしっこは0.7~1.5リットルぐらい(*2)になるそうです。

*2:おしっこやうんちの量は、食事や水分の摂取量、運動量などによって大きく異なります。

プライベートゾーン 人には見せない

さて、授業は徐々に核心に迫っていきます。本田先生は「人の體(からだ)は、食べ物を消化・吸収して、體(からだ)をつくり成長させる工場という機能のほか、未来の命につながる大切なものが入っている部分があります。それがプライベートゾーンです。プライベートゾーンは、食べ物や水分の入口と出口、通り道のこと。とても大切な場所で、口以外は、他の人に見せてはいけません」と強調しました。

プライベートゾーンを描いたイラスト。上の画像をクリックするとダウンロードページが開きます。

そして本田先生はその大切な部分をやさしく清潔に保つ必要性を説きます。「うんちとおしっこが出る部分を清潔に保つために、やさしく大切に洗う方法について知りましょう」。特に女の子は「生まれたときから将来、赤ちゃんが生まれる通り道があり、成長するにつれその部分から黄色い水や赤色の血(経血)が出たりします。ここはデリケートゾーンといって、よりやさしくケアする必要があります。ですからお湯やビデ(*3)で洗うことも大事になります」と説明しました。

エイト特派員は「男の子は女の子の體(からだ)がそうなっていると理解することが大事ですよね」と話しました。

*3ビデ:女の子の「デリケートゾーン」を洗う機能をビデといいます。ビデの語源は、フランス語の「bidet」で、18世紀初頭にフランスで生まれました。日本では、「温水洗浄便座」の機能として広まっていて、赤色の血が出てきたとき(生理)など、デリケートゾーンをよりやさしくきれいにするときに使用されています。

実験で使われた模擬うんち(左)と模擬経血

座学で體(からだ)の名称や仕組みを学んだ後は、いよいよ汚れを落とす実験です。会場はカフェのテラス。エイト特派員は「本物のうんちを持ってきたら大変なことになるので」と、模擬うんちはマッシュポテトの素、模擬経血は液体のりなどで作製したことを明かしました。

紙と水、きれいになるのはどっち?

お手伝いとして参加した高校生のデモンストレーションをみた後、子どもたちも模擬うんちや模擬経血を自分たちの手に塗りました。その汚れを、まずはトイレットペーパーだけで拭きました。意外と汚れが残ります。再び模擬うんちを手に塗り、今度はまず、シャワートイレ代わりのじょうろ水で洗い流します。その後、トイレットペーパーで拭くと汚れはほぼなくなりました。

また、紙でゴシゴシふき取るより、「おしり洗浄」や「ビデ洗浄」から出るシャワーで洗い流した方が、よりデリケートゾーンをやさしく、きれいにできることを学びました。

じょうろ水で「おしり」と「ビデ」の温水洗浄の疑似体験をする子どもたち

「温水洗浄便座」のノズルは何本?

最後に、実物を見て体験して、学ぶコーナーとして、LIXILの「温水洗浄便座」の実物を見ながら、LIXILの社員の方の解説を聞きました。子どもたちは「おしり用」のノズルと「ビデ専用」のノズルが分かれていることに気づき、その理由についても「ビデ専用はデリケートな部分をやさしく洗ってくれる」「おしり用は汚れをしっかり洗い流してくれる」など、講義や実験で学んだことと結びつけて、元気に活発に発言していました。本田先生から「授業が開催された公園の中にも「温水洗浄便座」があるから、みんなで何本か?調べてみよう!」と紹介されると、子どもたち、保護者の方々も興味津々の様子でした。

「デリケートゾーンケア」「ビデ」についての資料はこちら

LIXILのトイレの展示体でノズルを確認している子どもたち

最後のとりまとめでは、エイト特派員が「うんちは、トイレで下水に流れて処理をされますが、自然界では動物のうんちを微生物などが分解して、それが植物のごはんになったりします。地球の命はこのように循環しています」と説明しました。

「地球の命はつながっています」と語るエイト特派員(右)

小学3年生の女児=目黒区=は「體(からだ)のことを学べて面白かった」。小学4年生の男児=豊島区=は「実験もできて楽しかった」と話していました。

今回のイベントはSDGs(持続可能な開発目標)のゴール3「すべての人に健康と福祉を」を中心に4「質の高い教育をみんなに」5「ジェンダー平等を実現しよう」17「パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献します。

中澤研究室では、これからも3eウェルビーイング健康情報教育プロジェクトに取り組みます。中でも、研究室で学ぶ環境情報学部2年の杉山丈太郎さんは、人間の體(からだ)や骨の仕組みなどについて紹介する拡張現実(AR)技術を駆使したスマートフォンアプリの教材を開発しています。折り畳み絵本の裏側にある「にんげんの體(からだ)のヒミツ」と題したページが基になっています。今後、3eウェルビーイング健康情報教育プロジェクトよりリリース予定ですので、楽しみにしていてください。

絵本はこちらからダウンロードできます。

拡張現実(AR)技術を生かしたアプリを開発中の杉山丈太郎さん

本田由佳(ほんだ・ゆか)

健康情報学者/博士(医学)。神奈川県横浜市生まれ。 1997年、順天堂大学スポーツ健康科学部(所属ゼミ:生理学研究室)卒業後、株式会社タニタに入社。在職中の15年で体組成計や睡眠計のアルゴリズム開発、商品企画・開発などに携わりながら、東京大学大学院医学系研究科母性看護学・助産学分野研究員として7年間ウイメンズヘルスの研究に従事した。現在は、SFCや産科婦人科舘出張(たてでばり) 佐藤病院を拠点に産学官連携型ウェルビーイング健康情報教育プログラムの開発、ユースヘルスケアやフェムテックプラットフォームの研究などを行う。夢は「子どもと女性の健康力を上げて日本を元気にすること」。