<わたしの糧ことば・特別編>1児の父・社会学者 田中俊之さん

(2017年4月16日付 東京新聞朝刊)

1児の父で、社会学者の田中俊之さん

親をする

 男性が、男性ゆえに抱える悩みや葛藤を対象にした学問、男性学を研究しています。まさに、子育て中の男性が「育児したい」と思っても、現状は男女に賃金格差があり、家計は夫の稼ぎに依存している。結果的に妻の負担が重くなる。そんな葛藤も研究対象です。

 僕は出産に立ち会いましたが、正直、感動がなかった。今の方が息子に愛着があるんですよ。なぜかと考えたら、それは僕が息子と関わってきたから。オムツ替えもするし、ほぼ毎日、午後6時に帰宅して息子をお風呂に入れる。「意識を変える」なんて理念的なことより、具体的なことをする中で父親になる。そんな実感を込めた言葉です。

 女性が一人何役もやっているような現状を変えるには、父親が「親をする」ことが必要。ただ、家庭だけでは解決できないので、国がもっと子育てにコストをかけるべきだと思います。

たなか・としゆき

 東京都出身。大正大学心理社会学部准教授。専門は男性学。近著に「男が働かない、いいじゃないか!」(講談社+α新書)など。

 

糧ことば

 人生の先輩などから言われて救われた子育てに関する言葉。共有することで、独りぼっちで悩みがちなママたちの心を少しでも軽くしたい-との願いを込め、広告会社・博報堂の「リーママプロジェクト」のメンバーが名付けた。東京新聞では2016年9月から2年間、読者から寄せられた「わたしの糧ことば」を連載。著名人による特別編も5回掲載した。