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鈴木おさむさんインタビュー【前編】愛する順番は「妻が一番、息子が二番」最後は夫婦の人生だから

 放送作家の鈴木おさむさん(46)は、妻のお笑いタレント・大島美幸さん(38)との間に第1子である長男(3つ)が誕生後、1年間の育児休業(育休)を取得しました。今年6月に育児エッセー「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)を刊行した鈴木さんに、育児で心がけていることや、出産後の妻との関係について聞きました。

妻の気持ちを楽にするために…

-出産後、夫婦の関係は変わりましたか?
 夫婦のノリなんかは意外と変わっていませんね。ただ、産後に陥りやすい状態については、周りから「奥さんがイライラしてても流さなきゃダメだよ」と言われていました。その時期の女性の不安定さについて、僕は「気持ちのバランスの問題」だとは思っていなくて、単純に人間として、生き物として、出産後はそうなってるんだなあ、と捉えています。においに敏感になるとか、小さいことがすごく気になったりイライラしたりすることが多い。音がうるさく聞こえるとか、そういうことに対して気持ちの余裕がないようなことも、「気持ち」というよりは、「産後の体とか脳とか含めてそういうふうになってるんだろうな」と思うようにしてました。

-ちょっと理不尽かなと思うようなことに対しては、どう折り合いを付けていたんですか?
 「キタキター! これが話に聞いていた『産後のイライラ』だな」みたいな感じで受け止めていました。

-反論したくなったりは?
 自分の中ではありました。でも、「そういう状況だからしょうがない」というか。非常に言い方が難しいんですけれど、例えば「心の病気」って、僕は必ず脳や体に原因があると思ってるんです。産後もそれと一緒で、性格とかそういうことじゃなく、ホルモンのバランスもすべてにおいていつもとは違っていて、脳の何かを許すことに関係する部分が小さくなっているために、いつもなら許せることが許せなくなっていたりとかするんじゃないでしょうか。動物として、人として、「そうなってるんだ」と思って理解している感じですかね。

 あんな大きなものを体から出して、体のバランスも変わって。だから、それをもっとデータとして「脳のこの部分にこういう変化があるから、産後の女性の行動はこういうものだ」と示してもらえるといいのかもしれません。

 子どもの反抗期もそう。「気持ちや性格の問題」ではなくて、人間が成長していく過程においての体のバランスの変化が原因なんじゃないかなと思うんです。「男性の更年期」もそうですよね。更年期と言われると、「そういうもんだから」と納得できます。そうやって体が変わっていく時期なんだな、と納得できるように、産後の女性の大変な時期にも、名前を付けてあげるといいと思うんですよね。

-名前は大事かもしれませんね。
 僕、(子どもの)「イヤイヤ期」って言葉、好きじゃない。もうちょっと医学的な名前を付けてあげればいいのになって思うんですよね。通称イヤイヤ期でいいんですけど、本当は大事な時期だというのが分かるような、アカデミックな名前を付けてほしいなって思っています。子どもが殻を破るその時期、なんでそうなるのかということに対しての、医学的な説明があるはずだから、そういうふうに呼び名を付けてくれたらもう少し納得する。言葉がライト(軽)すぎるので医者がちゃんと付けるべきです。人間て医学的な言葉で言われると納得する。ふんわりと名前がついていることに対して、親が楽になる気もする。育児していて、そんなふうに思います。

 楽になるという点では、妻の気持ちを楽にするために自分ができることを探していました。その形が『シェア』でした。「手伝う」というのは「育児は基本的に母親がやる」っていう考えにおいての言葉になるじゃないですか。例えば仕事で何かを任されて、その企画を「シェアする」のって、一緒にやることなんだけど、「俺、手伝うよ」はちょっと違うじゃないですか。ちゃんとチームに入るか、部外者か。子どもが生まれたことにおいて「手伝う」っていうのはおかしいなと思うんですよね。

子どもはいずれ離れていくもの

―鈴木さん夫婦は子どもができてより良い関係になっているのですね。
 僕は、愛している順は、「妻が一番、息子が二番」でありたいと思っています。僕と妻がいて子どもが生まれたわけじゃないですか。僕は夜、家に着いたら、まず寝ている妻の手を取って頭をなでます。息子はその次です。それが夫婦にとって大切だと思っています。もちろん子どもは大切だし、かけがえのないものだけど、自分の息子にも「妻が一番、子どもが二番」になってほしいから、そういう姿を見せていきたいです。

 子どもといて今は楽しいですけれど、子どもはいずれ離れていくもの。僕は、「子ども」というものも「夫婦の過程」だと考えています。僕と妻が結婚して、夫婦になったことにおいての一個のプロセス。プロセスは大事にしなきゃいけないし、もちろん妻は今は子ども第一でいいのですが、でも、どこかで「子どもは夫婦の過程」だと思っていないといけないのではないでしょうか。

-いずれ夫婦の次のステージがくるということですね。
 はい。だって介護があるじゃないですか。自分の親を見てて思うんですよ。がんになって長く闘病している父は、母と一緒にバスに乗って遠くの病院まで行きます。僕ら子どもは行けないんです。親のことは心配だけど、自分の人生があるし、仕事もあるし、行きたい気持ちはあってもなかなか行けない。結局、最終的に夫婦のどっちかが介護することになります。下手したら、育児をしている時間より、介護をしている時間の方が長いですよね。介護も含めて、夫婦で病気や老いに向き合ってる時間の方が長くなる。結婚した以上、夫婦で生きていくというのは、そういうことだと思うんですよね。

 僕の父はもう70代後半です。近い将来、僕ら夫婦も、父と母のようにどちらかが病気になったりするはずです。そうなったときに残るのは夫婦なので、やはり僕は子どもは「過程」なんじゃないかと。少なくとも、父親側・男側は子どもとの関係を客観的に見ていた方がいいんじゃないかと思うんですよね。

-その考えが、「妻が一番、息子は二番」のもとにあるんですね。
 ええ。周りの夫婦を見ていると、子どもが生まれてから大きくなっていくまでの過程で、旦那さんのことを恨んでる奥さんが結構多いと感じます。僕、思うんです。その恨みが、マイナスのたまったポイントカードになって、旦那さんが動けなくなったときに使われるんじゃないかって。僕の知り合いにも熟年離婚の人がいます。子どもが巣立ったときに何を考えるかというと、自分の人生なんですよね。さっき僕は「過程」と言いましたけれど、子どもがある程度育つと、そこからは自分の人生です。結婚して、子どもが生まれて、子どもが育って、また夫婦2人になったときに、「夫婦の人生」ではなく、奥さんの方は「1人の人生だ」と思ってしまうわけですよね。奥さんから「離婚する」と言われてしまうのは、絶対に、子どもが小さい時からのマイナスポイントがたまった結果なんじゃないかと思います。子育て期の恨みや不満がずっとたまっていって、女の人が自分の人生を1人で歩き出せるようになった瞬間に、母親だけど一個人であると気付くという時が必ず来るんですよね。その時に夫に寄り添えるか、サヨナラってなるか。

妻の勇気ある「妊活発表」に応えたくて

-長男誕生後、約1年間の育休を取得しました。育休を取ろうと思った理由は?
 知り合いのディレクターが、彼の会社で初めて男性で育休を取りました。復帰した彼から、「おまえは作り手として、0歳から1歳の間の子どもを見てた方が絶対にいい」と言われたんです。それがずっと心に残っていたのが一番の理由です。

 もう一つは、妻が世の中に「妊活休業」というのを発表したことです。育休でも産休(産前産後休業)でもなく、妊活休業。発表したときに、「子どもができなかったらどうするんだ」という声はありましたし、その勇気ある行動に対して僕が何もしなくていいのか、と。

 ただ、妊娠中は何が起きるか分からないと思っていました。過去に2回残念なことになっていたので、子どもが妻のおなかで大きくなってきていても、「生まれた直後に子どもが亡くなることもあるし、何が起きるか分からない。常に僕は一歩引いて見ていなきゃ」と思ってました。けれど、いよいよ出産が近づいてくると、ふくらんでくる妻のおなかとともに、育休を取りたい僕の気持ちもどんどん大きくなってきました。

 (撮影・北田美和子)

【後編】育休で変わった夫婦関係と仕事 何かを諦め、何かを発見する

◇鈴木おさむさんの著書『ママにはなれないパパ』 マガジンハウスの紹介ページはこちら