〈清水健さんの子育て日記〉12・ふたりの写真、ママにも見せような

(2019年5月24日付 東京新聞朝刊)

これもセルフタイマーです!(笑)

セルフタイマーや自撮り 付き合ってくれる息子に感謝!

 「もうちょっと右」「うん、ボールを投げる手の方だよ」。息子と僕は真剣。ちゃんと画面に入っているかな。タイマーは10秒。カシャカシャとシャッター音がなり確認。「どう?」「ごめん、もう1回、いい?」

 2人の写真はセルフタイマーが多い。といっても三脚を使ったりするわけではなく、カメラを置ける場所を選んで、そこに2人が移動します。1回でうまくいく時もあれば、2回、3回と撮り直す時もあり、付き合ってくれる息子に感謝です(笑)。カメラを置く場所がない時は、腕をおもいっきり伸ばしてスマートフォンの画面側のカメラで全体が入るように…。

 ある催しを見に行った時のこと。うまくいかず、何度も撮り直す。なのに息子は文句ひとつ言わない。僕たちの後ろには息子が今、大好きな恐竜の絵。「パパ、全部入ってる?」。2人の10倍はある壁に描かれた恐竜の世界。かなり無理があります。「お撮りしましょうか」。お子さんと一緒のお父さんが声をかけてくださった。こういう時にも人の温かさを知ります。ピース姿の照れた2人の笑顔の写真が増えました。

北海道の同じ境遇の男性と電話「息子さんと遊びに来てね」

 妻の闘病生活を記した『112日間のママ』の出版を機にご依頼いただく講演会は250回を超えました。

 1年前、北海道での講演会に60代の男性が一人で来てくれました。男性も奥さまを病で亡くされています。最近、電話で話す機会があり、「あの時、清水さんの話を聞いて、このままではいけないと思ったんです」。いえ、僕にできることなんてなくて、手を握って、一緒に泣くことしかできませんでした。

 今は北海道で、バリアフリーのペンションを経営。僕の書籍に手紙を挟んで各部屋に置き、それがきっかけで宿泊者と会話が増えているそうです。手紙には「妻との時間は今までの人生の中で最も濃密で最も幸せな時間です」と記されています。まだ僕はそこまで思えていないかな…。1年前は、僕の話を聞いて泣き崩れていた方が、今、多くの方にエールを送っている。「僕たちの妻がこうやって会わせてくれたのかな。清水さん、今度、息子さんと遊びに来てくださいね!」

 どの場所にも温かさがあります。わが息子よ、遊びに行こうな。北海道の大自然。カメラを置く場所、いっぱいありそうだな(笑)。その写真、ママにも見せてあげような。(フリーアナウンサー)

しみず・けん 

1976年、堺市生まれ。2001年、読売テレビ入社。13年5月に結婚し、14年に長男誕生。約4カ月後に妻を亡くす。17年1月に退社、現在は主に講演活動を中心に活躍する。著書に「112日間のママ」(小学館)、「笑顔のママと僕と息子の973日」(同)。