アホでもいい。「本当のこと」を書こう。息子に伝える作文メソッド〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉

(2020年9月4日付 東京新聞朝刊)

 それにしても、今年の夏は寒かった。いや、暑かった。寒かったのはわが家の寝室。妊娠9カ月になった嫁さんは、普段よりも暑く感じるらしく、寝るときにクーラーをガンガンにかける。寒がりの僕は、鼻水を垂らし、布団に丸まって夏を越した。

 それと、子どもたちの小学校はコロナの影響で、お盆明けに早くも始まった。しかし、夏休みが長かろうが短かろうが、うちの子どもの宿題はたまってしまうものらしく、夏休みの最後の夜に必死こいて取り組んでいた。

 長男は読書感想文。次男は工作。

 楽しそうに工作をする次男とは逆に、長男は読書感想文にてこずっていた。「文章のことやったら聞かんかい。父ちゃんはな、東京新聞で連載まで持ってんねんぞ」と焼酎の水割りを片手に、嫌がる長男に自分のデタラメな文章メソッドを長々と講釈する。

 メソッドその1。最初にビックリさせといて、内容がなくても、なんとか最後まで読ませるように書く。メソッドその2。アホなのに賢く見せようとしないで、本当のことを相手に伝わるように書く。とかなんとか言ったと思う。

 出来上がった長男の感想文は、「ぼくはさいしょ、ヘレン・ケラーは、男の人だと思っていました。」で始まった。すごくいいと思った。

※第1金曜日掲載

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(リトルモア)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。10歳、7歳、3歳の3兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。