選択的夫婦別姓の早期実現求め、ビジネスリーダー有志の会が1000人超の要望書提出 「投資や優秀な人材が集まりにくくなる」
海外で法的根拠ない名を使用するリスクも
法務省では、有志の会の呼びかけ人の一人で、経済同友会の田代桂子副代表幹事が要望書を提出。門山宏哲法務副大臣に「長年の要請。社内でも(別姓を選べず)困っている人が多く、コストもかかっている。ぜひ実現いただければ」と求めた。門山氏は「しっかり読み、大臣と問題について共有する」と応じた。有志の会は、経営者や役員ら計千人超の署名も渡した。
経団連や新経済連盟(新経連)、全国女性税理士連盟、女性経営者らでつくる「日本跡取り娘共育協会」の担当者も同行し、深沢陽一外務政務官と矢田稚子(わかこ)首相補佐官、古賀友一郎内閣府政務官に要望書などを渡した。新経連の井上高志理事は「なぜ制度ができないのか理由を問いたい」と語った。
有志の会事務局の井田奈穂さんは経済界が要望する背景を「国際標準やジェンダー平等への遅れで投資も人も集まりにくくなり、経済成長の阻害要因になるのではという危惧や、ダブルネームの運用で企業に発生する無駄や海外で法的根拠のない名前を使用することによるリスク」と説明。要望が「硬直化して動かない政治に対する良質な圧力となれば」と話した。(砂本紅年)
東京・札幌で12人が提訴 訴訟団としては3回目
個人の尊重を保障した憲法に違反
2011年から訴訟を続けている選択的夫婦別姓訴訟団による3回目の提訴。過去2回は、最高裁大法廷が現行規定を合憲と判断したが、裁判官15人のうち第1次(15年)は5人、第2次(21年)は4人が違憲とした。
訴状では、現行規定を「夫婦いずれかが姓を変えるか、双方が姓を維持するため結婚を諦めるか、過酷な二者択一を迫るもの」と批判。個人の尊重や婚姻の自由などを保障した憲法に違反すると主張している。
30年以上待ったが、もう待てない
提訴後、東京都内で開かれた記者会見にはオンライン参加の札幌訴訟の2人を含め7人が出席した。
「30年以上法改正を待った。もう待てない」。事実婚11年目の東京訴訟原告の上田めぐみさん(46)は訴える。「自分の氏名は自分そのもの。結婚で意に沿わない改姓を迫られれば、もやもやは一生ものになる。みんなが幸せになるには別姓が必要」
弁護団は、最高裁の違憲判決までは3~5年かかるとみる。長野県箕輪町の原告小池幸夫さん(66)は「今も悩み苦しむカップルがいる。勝訴判決を希望しているが、きょうにでも国会が動いて法改正してほしい」と求めた。弁護団長の寺原真希子弁護士は「これは人権問題。人権侵害を今度こそ司法に止めてもらいたい」と話した。(加藤益丈)
選択的夫婦別姓
夫婦が望めば、結婚後もそれぞれ結婚前の姓(氏)を使うことを認める制度。民法750条は婚姻時に「夫または妻の氏を称する」と定め、一方の姓にしなければならない。女性が改姓するケースが大半で、仕事や生活で支障を来しているとの指摘が上がっている。