〈ペアレント・トレーニング〉5・怒るのを我慢できない時は、「行動計画」を作ってみよう
悩み「4歳の息子の食事態度が悪く、怒るのを我慢できません」
4歳の息子は食事中に立て膝をしたり、横を向いたり。前回教わった「気付かないふり」が難しくて、つい「ちゃんと座って!」と声を荒らげてしまいます。
解決のヒント「どうやって気付かないふりをするか、あらかじめ計画を立てておきましょう」
<小児科医・長瀬美香さんから>
「怒らないようにしよう」と思っていても、気になる子どもの様子を目の前にすると、そう簡単ではありませんよね。
前回は、子の「してほしくない行動」を減らすために、「気付かないふりをして待つ」練習をしました。ただ、時間のない朝などは待ちきれず、結局声をかけたり注意したりしてしまうこともあるでしょう。
とりわけ、親自身がとてもイライラしてくるような子どもの行動に対して、気付かないふりをするのは至難の業です。でも初めは、すべての好ましくない行動に気付かないふりをしようと思わなくてもよいのです。できるところから進めていきましょう。
具体的には、子どもの好ましくない行動を思い返し、その中で「気付かないふり」をしやすい行動をまず2つ3つ挙げて、練習してみましょう。注意する回数が少し減るだけでも、親子の穏やかな時間が増えるかもしれません。
気付かないふりをする行動が決まったら、「実行計画」を立てるのも効果的です。
次の❶~❾を書き出してみましょう。
❶してほしくない行動
❷①に対して「気付かないふりで待つ」をした後、どのように行動が変わったらほめたいか
❸どこで①が起きるか
❹いつ①が起きるか
❺①が起きた時、自分はどうしたらよいか(視線・体の向き、感情表現)
❻①に注目する代わりに、何に集中したらよいか
❼待つ間、自分を励ます言葉
❽①をやめた時、もしくは②を始めた時、どうやってほめるか
❾①をやめようとしない時、何をするか
質問の悩みに対しての実行計画は、例えば下の表のような形です。
積極的にほめていなくても、和むような言葉をかけてもよいでしょう(❽)。子が気付かなかったり、意地を張ったりして好ましい行動に切り替わらない場合の妥協策まで考えておきましょう(❾)。
親の側が「気付かないふりの仕方」と「ほめる行動」をあらかじめ意識することが、うまくいくコツですよ。
「気付かないふりで待つ」ための【実行計画表】のPDFファイルを、こちらからダウンロードできます
担当記者がやってみると…
朝食時、早速立て膝を始めた息子。内心「またか」と思いつつ、自分が料理をかむ回数をカウント。目の端にとらえた息子が、座面から一瞬、足を下ろした瞬間に「お、いい姿勢だね~」と声をかけました。その途端、横を向いていた体が正面を向き、背筋もピンと伸びました。
もちろん、毎回こんな「神対応」ができているわけではありません。食事中の姿勢が悪いせいで肘がおわんに当たり、カーテンまで中身が飛び散るような惨状には、さすがに堪忍袋の緒が切れます。正直に言うと、いまだに怒ってしまう日の方が多いです。でも「できるところからでいい」「3回のうち、まずは1回でも気付かないふりをしよう」と自分へのハードルを低く設定することも大事だと感じています。
子どもの反応が変わる様子を見ると、「次もやってみようかな」と思えます。怒らない朝、すてきですよ!