〈ペアレント・トレーニング〉2・ほめるコツは「25%」いい行動を始めたらすぐに!

(2018年11月2日付 東京新聞朝刊)

笑顔が増える ペアレント・トレーニング

 「ペアレント・トレーニング」の第2回は、ほめる練習です。一口に「ほめる」と言っても、方法はさまざま。タイミングも大事です。「こんな当たり前のことをほめるの?」「そんなほめ方、ちょっと面倒だなあ」と感じた方も、だまされたと思ってぜひ一度試してみてください。お子さんのすてきな反応が見られるかもしれません。今回は、臨床心理士の三間(みま)直子さんに、「4歳の息子をなかなかほめられない」という悩みを相談しました。

悩み「4歳の息子は何をしても脱線ばかりです」

 着替え始めても歯磨きを始めても、いつも途中で脱線する4歳の息子。ほめてあげたいのに、なかなかほめられません。

解決のヒント「取り掛かったタイミングを逃さずにほめましょう」

<臨床心理士・三間直子さんから>

 分かります。せっかく着替え始めても、最後までできるとは限りませんものね。

 前回は子の行動を①好ましい行動②好ましくない行動③危険な/許しがたい行動―の3つに分けました。今回は①好ましい行動に注目し、ほめる機会を増やしていきましょう。それが、②③に対処する前のステップとしてとても大切です。ほめることで親も子も気持ちが穏やかになります。また、子は何をすれば良いかがよく分かるようになります。

 ①好ましい行動のうち、さらに増やしてほしい行動をほめると、子はより頻繁にその行動をするようになります。認められていると感じると、他のことでも協力的になります。

 ほめ方は、「すごいね」「えらいね」以外にもいろいろあります。「あと少しだね」と励ましの声をかけたりしてもいいでしょう。その行動に気付いていることを知らせるために、シンプルに「着替えているね」と子の行動を言葉にするのも効果的です。ほほ笑む、そっと肩に触れる、「助かったよ」と感謝することも有効です。

図解 ほめた子どもの行動を書きだす例

書き出すことで、子どものよいところや声掛けへの反応に気付きやすくなります。1~2週間かけて、具体的な言葉で記録してみましょう

 ほめ方のこつは、子が①好ましい行動を始めようとしている時、始めた時を逃さず、できるだけ早いタイミングでほめること。行動の25%でほめるイメージです。着替えや歯磨きも、取り掛かった時点でほめ、子の気持ちを前向きに押してあげましょう。完全に終わるのを待っていては、ほめるタイミングを失うことがあります。

 「着替えてくれていて助かったよ」のように、好ましい行動を言葉に入れてほめることで、何が良かったかが、子どもに伝わりやすくなります。離れた場所から声をかけるのではなく、子のそばまで行き、視線を合わせて声をかけましょう。ついつい「いつもそうしてくれたらいいのに」と言ってしまいがちですが、皮肉や批判は控えて。どんなふうにほめられたら子はうれしいか、子の性格や感じ方、年齢に合わせていろいろなほめ方を試してみましょう。
「子どもをほめた内容」を書き出すためのPDFファイルを、こちらからダウンロードできます。

中学生になっても「ほめる」効果はあるの?

 中学生にもなると、「すごいね」「えらいね」といった評価の言葉よりも、感謝されたり、自分の考え方を認めてもらったり尊重してもらったりする肯定的な反応の方が効果があることが多いです。

 また、好ましい行動の選び方については、日常的に当たり前にできていることをほめると「ばかにしているの!?」と反発する子もいるので注意が必要です。そんな時は、「お母さんはうれしくて声をかけたけど、あなたにとっては当たり前だったのね。成長してうれしいよ。これからは言わないね」と反抗自体も尊重して返せばよいのです。こんな心づもりをしておくと、大人側も焦ったり、悲しくなったり、イライラしたりしません。

 いずれにしても、思春期のお子さんには「一人前として尊重している」という大前提で、大人側が「成長を喜んでいる/信頼を置いている」という気持ちをもって伝えることが大事です。中学生ぐらいだと素直に喜ばず、ほめた手応えを感じにくいかもしれませんが、内心ではきっとうれしいはずなので、そう信じながら続けてもらえたらと思います。

担当記者がやってみると…

 朝、服を脱ぎ始めた4歳の息子の横にしゃがみ、「あれ、もう着替え始めてるの? 早いね」と声をかけると、「うん!」と答え、着替え終わると歯磨きにも自ら取り掛かりました。得意げな顔に「ああ、こういう顔が見たいんだった」とうれしい気持ちになりました。プラスの行動の連鎖に、私の方が驚いています。

 「ペアレント・トレーニング」は発達障害児の親向けに採り入れられることが多い手法で、子育てのさまざまな場面で有効です。「お母さん、いつも怒ってるよね」と言われてしまった4歳、小学2年、4年の3児を子育て中の記者が、実際にペアレント・トレーニング講座を受講。実施経験が豊富な、心身障害児総合医療療育センター(東京都板橋区)の小児科医・長瀬美香さん(50)と臨床心理士・三間直子さん(47)に、声掛けや振る舞い方のヒントをいただきながら進みます。
※「笑顔が増える ペアレント・トレーニング」は毎月第1金曜に掲載します。
 
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  • 匿名 says:

    学童保育で指導員をしています。言葉遣いがあれ、直ぐにケンカに発展してしまうので、立て直しの手段として、日頃、子ども達の行動に注意ばかりが、多かったので、褒めてあげよう。スローガンに掲げましたが、中々難しさを感じてます。ペアレントトレーニングの事例を参考にさせて頂きます。有難うございました。

      

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